孔子の論語 憲問第十四の三十二 人の己を知らざることを患えず、己の能なきを患う

孔子の論語の翻訳375回目、憲問第十四の三十二でござる。

漢文
子曰、不患人之不己知、患己無能也。

書き下し文
子曰わく、人の己を知らざることを患(うれ)えず、己の能(のう)なきを患う。

英訳文
Confucius said, “Do not care that the others don’t appreciate you. Care that you don’t have ability.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「他人が自分を評価してくれない事を気に病むより、自分に能力が無い事を気にしなさい。」

Translated by へいはちろう

学而第一の十六に似たような言葉があるのでござるが、ちょっとニュアンスが違うでござるな。

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孔子の論語 憲問第十四の三十一 夫れ我は則ち暇あらず

孔子の論語の翻訳374回目、憲問第十四の三十一でござる。

漢文
子貢方人、子曰、賜也賢乎哉、夫我則不暇。

書き下し文
子貢(しこう)、人を方(たくら)ぶ。子曰わく、賜(し)や、賢なるかな。夫(そ)れ我は則(すなわ)ち暇(いとま)あらず。

英訳文
Zi Gong said bad things about others. Confucius said, “You must be wise. I have not time like you.”

現代語訳
子貢(しこう)が他人の悪口を言いました。孔子は、
「お前はどれほど賢いつもりかね?私にはお前みたいな暇は持ち合わせていないよ。」
とおっしゃいました。

Translated by へいはちろう

孔子のおっしゃる事は正論なのでござるが、憲問第十四の四十五で昔なじみに悪口を浴びせてそのすねを杖で叩いた御仁の言葉とは思えないでござるな。

孔子でさえつい身の程を忘れる事がある、凡人である拙者はなおさら注意しなければならない筈でござるが、ついつい他人の悪いところが目に付いてしまうのでござる。

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孔子の論語 憲問第十四の三十 仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼れず

孔子の論語の翻訳373回目、憲問第十四の三十でござる。

漢文
子曰、君子道者三、我無能焉、仁者不憂、知者不惑、勇者不懼、子貢曰、夫子自道也。

書き下し文
子曰わく、君子の道なる者三つ。我能(よ)くすること無し。仁者は憂えず。知者は惑わず、勇者は懼(おそ)れず。子貢(しこう)が曰わく、夫子(ふうし)自ら道(い)うなり。

英訳文
Confucius said, “There are three requirements as a gentleman. I cannot meet them. ‘The benevolent have no worry.’, ‘The wise have no delusion.’, ‘The brave have no fear.'” Zi Gong said, “Master is humble. I think he meets all of them.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人格者としての条件が3つある。私にはとてもできない事だが、”仁者は悩まない”、”知者は迷わない”、”勇者は恐れない”。」
子貢(しこう)がこれを聞いて言いました、
「先生は謙遜なさっている。まさに先生の事ではないか。」

Translated by へいはちろう

子貢(しこう:姓は端木、名は賜、字は子貢。詳細は公冶長第五の九に。)

子罕第九の三十でもほぼ同じ事をおっしゃっているでござる。

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孔子の論語 憲問第十四の二十九 君子は其の言の其の行に過ぐるを恥ず

孔子の論語の翻訳372回目、憲問第十四の二十九でござる。

漢文
子曰、君子恥其言之過其行也。

書き下し文
子曰わく、君子は其の言の其の行に過ぐるを恥ず。

英訳文
Confucius said, “Gentlemen feel shame when their words exceed their acts.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人格者はその言動がその行動を上回る事を恥じる。」

Translated by へいはちろう

憲問第十四の二十一でも言ったでござるが、日頃から口達者で行動よりも言葉が先にでる拙者としては耳が痛い限りでござる…

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孔子の論語 憲問第十四の二十八 君子は思うこと其の位を出でず

孔子の論語の翻訳371回目、憲問第十四の二十八でござる。

漢文
曾子曰、君子思不出其位。

書き下し文
曾子(そうし)の曰わく、君子は思うこと其の位を出でず。

英訳文
Zeng Zi said, “Gentlemen do not think of matters that are not their duty.”

現代語訳
曾子(そうし)がおっしゃいました、
「人格者たるもの、自分の職分を越える事については考えないものだ。」

Translated by へいはちろう

曾子(Zeng Zi, 姓は曾、名は参、字は子與。詳細は里仁第四の十五に。)

おそらく「自分の責任を果たす事に集中するから、他人のやる事にいちいち首を突っ込んでいる暇などないはず。」という事なのでござろうが、なんとなく官僚の「事なかれ主義」のイメージが思い浮かばれるでござるな。

現在の日本の官僚が「事なかれ主義」なのか、それとも「自分の責務に忠実」なのかなどという野暮な話はテレビにでもまかせておくとして、曾子のおっしゃる事は正論でござるな。

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