論語」カテゴリーアーカイブ

孔子の論語 里仁第四の二十六 朋友に數すれば、斯に疎んぜらる

孔子の論語の翻訳92回目、里仁第四の二十六でござる。

漢文
子游曰、事君數斯辱矣、朋友數斯疎矣。

書き下し文
子游(しゆう)曰わく、君に事(つか)うるに數(しばしば)すれば、斯(ここ)に辱(はずか)しめられ、朋友(ほうゆう)に數すれば、斯に疎(うと)んぜらる。

英訳文
Zi You said, “You will fall into disgrace with your lord if you frequently remonstrate. You will be disliked by your friends if you frequently remonstrate.”

現代語訳
子游(しゆう)がおっしゃいました、
「主君に対して何度も注意をすると主君の寵愛を失う。友人に対して何度も注意をすると友情を失う。」

Translated by へいはちろう

子游(しゆう:孔門十哲の一人、姓は言、名は偃、字は子游。文学に優れ、武城の長官になる。)

さて今回で里仁第四は終わりで明日からは公冶長第五の翻訳に移る訳でござるが、今回の文は人付き合いのコツみたいなものでござるかな。どんなに自分が正しいと思っている事を相手の為を思って言っても、いつも喜ばれるとは限らないものでござる。相手には相手の考えや立場があるからでござる。かといって忠言を全くをしないと言うのも人としての誠意に欠けるので、要点を簡潔に必要な時にだけ伝える事が出来れば理想でござるな。

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孔子の論語 里仁第四の二十五 徳は孤ならず、必らず隣あり

孔子の論語の翻訳91回目、里仁第四の二十五でござる。

漢文
子曰、徳不孤、必有鄰。

書き下し文
子曰わく、徳は孤(こ)ならず。必らず隣あり。

英訳文
Confucius said, “A person of virtue is not isolated. He must have some companions.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「徳の備わっている人間は孤立する事は無い。必ず仲間がいるものだ。」

Translated by へいはちろう

人格者には友がいる、または友と語らい自らを高める。という様な解釈でござろうか?ここでまた俗世との交わりを嫌った老荘思想家との違いがあらわれていて面白いでござるな。竹林の七賢に代表される様にかれらは決して独りでは無かったのでござるが、老子はその点とても極端でござる。老子の第二十章から衝撃的な一節を紹介するでござる。

世の人々はみんな笑顔でご馳走を食べている様に見える。まるで春の日に高台から世界を見ているかの様だ。しかし私といえば一人きりで動くそぶりも見せず、笑う事を知らない赤ん坊の様だ。ぐったりと疲れて果てて身の置き所も無いかの様だ。世の人々はみな有り余る何かを持ち合わせているのに、私と言えば何もかも失ってしまったかの様だ。私をそういう愚か者の心を持っていて、ぼんやりと何が確かなのか解らずにいるのだ。世の人々はきらきらと眩いばかりだが、私だけは一人暗がりに居る様だ。世の人々は賢く聡明であるのに、私だけは一人悶々としている。ゆらゆらと大海原に漂い、風の様にどこへ行くかも解らない。世の人々はそれぞれ世の為に役立っているのに、私だけが一人じっとして何の役にも立たずにいる。私だけが人とは違っていて、大いなる「母」に養われる事を大切に守っているのだ。

とあり、孤独を嘆いているのか「道」を説いているのか解らないが、むしろ老子の心情の独白であって美しい詩文とさえ思える程でござる。

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孔子の論語 里仁第四の二十四 君子は言に訥にして、行に敏ならんと欲す

 孔子の論語の翻訳90回目、里仁第四の二十四でござる。

漢文
子曰、君子欲訥於言、而敏於行。

書き下し文
子曰わく、君子は言(げん)に訥(とつ)にして、行(こう)に敏(びん)ならんと欲す。

英訳文
Confucius said, “Gentlemen want to speak modestly and to act smart.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人格者は言葉を控え目にして行動を機敏にしたいと思うものだ。」

Translated by へいはちろう

孔子はこの通り能弁な者よりは、言葉少なめで行動を重んじる朴訥な人間を善しとしたのでござる。拙者もかくありたいと思うのでござるが、残念ながら能弁な方なのでコンプレックスを感じる程でござる。

中国史には逆に舌先三寸で国の命運を左右した縦横家や説客などのエピソードもあるので、それはそれで読み物としては面白いでござるよ。 「戦国策」なんかお勧めでござる。

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孔子の論語 里仁第四の二十三 約を以てこれを失する者は鮮なし

孔子の論語の翻訳89回目、里仁第四の二十三でござる。

漢文
子曰、以約失之者、鮮矣。

書き下し文
子曰わく、約(やく)を以(もっ)てこれを失(しっ)する者は、鮮(すく)なし。

英訳文
Confucius said, “If you are moderate, your mistakes will be reduced.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「何事にも節度を心がければ、失敗する事は少なくなるだろう。」

Translated by へいはちろう

別の言い方をするならば「中庸(ちゅうよう)」というヤツでござるな。仁義礼智信の五常の徳と同じくらいに重要な儒学の徳目の一つでござる。簡単にいうと「過不足無く、偏りの無い事」を良い事だとしたのでござる。

意見は大げさな方が解り易い、行動は大げさな方が目立つ。しかし孔子はこれらを戒め節度を守る事の重要さを説いたのでござる。

中庸は四書の内の一つの題名になっている事でも知られているでござる(他の三つは「大学」「論語」「孟子」)。雍也第六の二十九でも孔子が中庸に関して言及しているでござるな。 他にもギリシャのアリストテレスが同じ様な事(メソテース)を言っているでござる。

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孔子の論語 里仁第四の二十二 古者、言をこれ出ださざるは、躬の逮ばざるを恥じてなり

孔子の論語の翻訳88回目、里仁第四の二十二でござる。

漢文
子曰、古者、言之不出、恥躬之不逮也。

書き出し文
子曰わく、古者(こしゃ)、言(げん)をこれ出(い)ださざるは、躬(み)の逮(およ)ばざるを恥じてなり。

英訳文
Confucius said, “Ancient people were reticent, because they feared that their words don’t suit their actions.

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「昔の人々が寡黙であったのは、言葉が行動を伴わない事を恥としたからだ。」

Translated by へいはちろう

孔子にとっての昔の人々が寡黙であったかどうかはともかく、耳が痛いでござるな。あんまり耳が痛すぎて何もコメントできなくなってしまったでござる。

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