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孔子の論語 子路第十三の十四 如し政あらば、吾を以いずと雖も、吾其れこれを与り聞かん

孔子の論語の翻訳327回目、子路第十三の十四でござる。

漢文
冉子退朝、子曰、何晏也、對曰、有政、子曰、其事也、如有政、雖不吾以、吾其與聞之。

書き下し文
冉子(ぜんし)、朝(ちょう)より退く。子曰わく、何ぞ晏(おそ)きや。対(こた)えて曰わく、政(まつりごと)あり。子曰わく、其れ事(こと)ならん。如(も)し政あらば、吾(われ)を以(もち)いずと雖(いえど)も、吾其れこれを与(あずか)り聞かん。

英訳文
Ran Zi came back from the palace. Confucius asked, “Why have you come back so late?” Ran Zi replied, “We had a problem of national affairs” Confucius said, “It is probably a problem of Ji family’s affairs. If there is a problem of national affairs, they surely consult me even if they don’t leave it to me.”

現代語訳
冉子(ぜんし)が朝廷より戻られました。孔子が、
「随分遅かったな。」
と尋ねると、冉子は、
「国務上の問題があったのです。」
と答えられました。すると孔子は、
「国務ではなく、お前の仕える季孫氏の私事だろう。もしも国務上の問題であれば、私に任せないとしても何らかの相談があるはずだ。」
とおっしゃいました。

Translated by へいはちろう

冉子(ぜんし:姓は冉、名は求、字は子有。詳細は八佾第三の六に。)

いかにも孔子らしい儒学的な発想でござる。

良い悪いは別として、現代日本でも元総理とか会社の相談役とか一線を退いた人物がご意見番として影響力を保ち続ける事はよくあることでござるな。

世代交代をスムーズに行うために自然と出来上がったシステムなのでござろうが、一線を退いたが故に見えてくる面があったり無責任な立場から自由な発想ができたりして、ついつい余計な口出しをする御仁もちらほらとおられるでござる。

困ったものだと思いつつも、そういう御仁を許容できないようでは口出しされても仕方がないとも思う次第。

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孔子の論語 子路第十三の十三 苟も其の身を正せば、政に従うに於てか何か有らん

孔子の論語の翻訳326回目、子路第十三の十三でござる。

漢文
子曰、苟正其身矣、於從政乎何有、不能正其身、如正人何。

書き下し文
子曰わく、苟(いやしく)も其の身を正せば、政(まつりごと)に従うに於(おい)てか何か有らん。其の身を正しくすること能(あた)わざれば、人を正しくすることを如何(いかに)せん。

英訳文
Confucius said, “If you are righteous, you can manage politics without troubles. If you are not righteous, how can you lead other people rightly?”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「もし自らが正しければ、政治を行うぐらいは何でもない。もし自らが正しくなければ、どうやって他人を正しく導くことができるだろうか。」

Translated by へいはちろう

孔子が何度も言い方を変えておっしゃってるのは、「まず人の上に立つ人間が(自分自身が)正しくあれば、下の人間は自然とそれに従う」という事でござる。

言い換えてみれば、「率先して正しくあろうと思わない人間は人の上に立つ資格が無い」という事でござろうか。拙者はできれば人の上にも下にも立ちたくないのでござるが。

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孔子の論語 子路第十三の十二 如し王者あらば、必ず世にして後に仁ならん

孔子の論語の翻訳325回目、子路第十三の十二でござる。

漢文
子曰、如有王者、必世而後仁。

書き下し文
子曰わく、如(も)し王者あらば、必ず世にして後に仁ならん。

英訳文
Confucius said, “Even if a monarch who received Heaven’s will rules a country, the country needs thirty years until benevolence prevails.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「もし天命を受けた王者が世を治めたとしても、仁が国中にいきわたるには30年ほどかかるだろう。」

Translated by へいはちろう

前回の「善人でも100年治めれば~」を受けて言った言葉でござるな。そのさらに前に「私は3年で理想を実現する」とも言っておられるが、この場合は3年で仁政を布くための準備を完成させるということでござろうな。

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孔子の論語 子路第十三の十一 善人、邦を為むること百年、亦以て残に勝ちて殺を去るべし

孔子の論語の翻訳324回目、子路第十三の十一でござる。

漢文
子曰、善人爲邦百年、亦可以勝殘去殺矣、誠哉是言也。

書き下し文
子曰わく、善人(ぜんにん)、邦(くに)を為(おさ)むること百年、亦(また)以(もっ)て残(ざん)に勝ちて殺を去るべしと。誠(まこと)なるかな、是(こ)の言や。

英訳文
Confucius said, “They says, ‘If someone governs a country for a hundred years, even though he is an ordinary person, the country can reduce crimes and can abolish the death penalty.’ I think it is true.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「普通の善人でも国を100年も治めれば、犯罪を減らして死刑を無くす事ができるというが、この言葉は本当だと私は思う。」

Translated by へいはちろう

前回の「三年あれば理想を叶えられる」を受けての言葉でござろうな。長い歴史を振り返っても同じ人間が100年も政治を行う例など普通に考えてある訳無いのでござるが、もしそんな事があったら王朝はその代か次の代で滅ぶでござろうな。

前にも言ったでござるが、権力というのは集中すればするほど時間の経過とともにリスクを高めていくのでござる。世襲君主でさえ通常20~30年程度で代が変わるというのに100年も同じ人間が権力の座にいたら彼に恨みを持つ人々は親子三代に渡って恨みを蓄積させることになるのでござる。逆に彼に優遇された人々は親子三代に渡って栄華を欲しいままにし腐敗と堕落をまねくでござろう。

どんな名君でも50年くらいが限界だと拙者は思う次第でござる。

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孔子の論語 子路第十三の十 期月のみにして可ならん、三年にして成すこと有らん

孔子の論語の翻訳323回目、子路第十三の十でござる。

漢文
子曰、苟有用我者、期月而已可也、三年有成。

書き下し文
子曰わく、苟(いやしく)も我を用(もち)うる者あらば、期月(きげつ)のみにして可ならん。三年にして成すこと有らん。

英訳文
Confucius said, “If someone appoints me to an important position, I can get results within a year. Three years are enough to accomplish my ideal.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「もし私を重く用いる国があれば、一年で成果を出してみせる。三年もあれば理想を達成してみせるのだが。」

Translated by へいはちろう

この言葉は衛に仕官での仕官を希望していた孔子が、結局衛の霊公に用いてもらえずに嘆じたと言われているでござる。雍也第六の二十八では霊公の夫人である南子と我慢して会ってまでいるので、孔子の落胆は相当なものであったでござろう。

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