学問のすすめ 二編 段落一 人は同等なる事

学問のすすめの翻訳、二編 段落一でござる。

現代語訳

人は平等だという事

 初編の冒頭で私は、「人は皆すべて同じ身分に生まれ、上下の区別なく自由自在である」と言った。今この意味するところを広げて解りやすく説明しよう。人が生まれてくるのは天がそういう風にしているのであって、人の力によって生まれてくるのではない。これらの人々が互いに敬愛して、それぞれの役目を果たして互いの邪魔をしないというのは、もともと同じ人間であり、ただ一つの天を共有し、お互いが天地の間に生きる被造物だからである。例えるなら一つの家庭の兄弟が仲良くするのと同じで、もともと同じ家の兄弟であり、同じ両親を持っているという人として当たり前の事実がある様なものである。

英訳文

Everyone is equal.

In the beginning of the first chapter, I said, “All men are created equal and free.” Now I explain it in detail. All men are born by Heaven’s will, not by human power. All people should love and respect each other, fulfill their duty and should not bother others. Because they are the same human beings, share the same heaven and are creations between heaven and earth. This is about the same, that siblings love each other because they are in the same family and have the same mother and father.

Translated by へいはちろう

こうして福沢諭吉がことさらに繰り返して強調するのは、もちろん当時の人々にとって「人は平等ではない」という考えの方が常識だったからでござろう。

およそ100年に及ぶ戦乱と下剋上の世を経て成立した江戸幕府が、統治原理の柱として身分制を肯定する朱子学を採用した事については決して間違いではなかったと拙者は考える次第でござる。少なくとも約260年にわたって大きな戦乱もなく、人々の暮らしや文化が大いに発展した事実については認めなければならないでござろう。

しかし260年も経てば時代は変わり、当初良かった事の悪い部分が次第に表れるようにもなる。特に国内ではなく外部に大きな戦乱の火種がくすぶるような時代には合わなくなるのも当然と言えば当然でござるな。

明治維新によって実際にどれだけ人々が平等になったのかについては、人それぞれ受け取り方も違うと思うのでここであえて触れないでござる。

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