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孔子の論語 季子第十六の十一 吾其の語を聞く、未だ其の人を見ず

孔子の論語の翻訳442回目、季子第十六の十一でござる。

漢文
孔子曰、見善如不及、見不善如探湯、吾見其人矣、吾聞其語矣、隱居以求其志、行義以達其道、吾聞其語矣、未見其人也。

書き下し文
孔子曰わく、善を見ては及ばざるが如(ごと)くし、不善を見ては湯を探る如くす。吾(われ)其の人を見る、吾其の語を聞く。隠居して以(もっ)て其の志しを求め、義を行いて以て其の道を達す。吾其の語を聞く、未(いま)だ其の人を見ず。

英訳文
Confucius said, “A person, who aspires after good deeds as if he could never reach them and avoids bad deeds as if they were boiling water, I have ever seen such a person. I have also heard the story of such a person. A hermit, who aspires after an ideal and justice, and has accomplished them, I have ever heard a story of such a person. But I have never seen such a person.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「善行は手が届かないかのように追い求め、悪行は熱湯に手を入れるかのように避ける、私はそんな人物に会った事もあるし、そんな話を聞いた事もある。隠居してひきこもりながら理想を求め、正義を実践して理想を達成している、私はそんな話を聞いた事はあるが、そんな人物を見た事が無い。」

Translated by へいはちろう

隠者には個人としての理想は実現できても、社会全体を理想へ近づける事はできないという批判が込められているのでござろうか。

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孔子の論語 季子第十六の十 君子に九思あり

孔子の論語の翻訳441回目、季子第十六の十でござる。

漢文
孔子曰、君子有九思、視思明、聽思聰、色思温、貌思恭、言思忠、事思敬、疑思問、忿思難、見得思義。

書き下し文
孔子曰わく、君子に九思(きゅうし)あり。視るには明(めい)を思い、聴くには聡(そう)を思い、色には温(おん)を思い、貌(かたち)には恭(きょう)を思い、言には忠(ちゅう)を思い、事には敬(けい)を思い、疑わしきには問(もん)を思い、忿(いかり)には難(なん)を思い、得るを見ては義(ぎ)を思う。

英訳文
Confucius said, “A gentleman has nine lessons. To see clearly, to hear in detail, to keep a gentle face, to behave moderately, to speak honestly, to work carefully, to confirm uncertain things, to consider before getting angry, and to consider whether one’s benefit is reasonable before getting it.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人の手本たるべき君子には九つの心掛けがある。物事をはっきり視る事、人の話は詳細に聞く事、温和な表情を保つ事、恭しい態度を保つ事、誠実に話す事、慎重に仕事を為す事、不確かな事は確認する事、怒りを表す前に後の事に思いを致す事、利益を得る前にそれが道理に適っているか考える事だ。」

Translated by へいはちろう

前半部は仏教でいうところの八正道が思い出されるでござるな、なんとなくでござるが。

八正道
正見(正しく見る事)、正思惟(正しく考える事)、正語(正しく話す事)、正業(正しく行動する事)、正命(正しく生活する事)、正精進(正しく精進する事)、正念(正しい意識を持つ事)、正定(正しく瞑想する事)

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孔子の論語 季子第十六の九 困みて学ばざる、民斯れを下と為す

孔子の論語の翻訳440回目、季子第十六の九でござる。

漢文
孔子曰、生而知之者、上也、學而知之者、次也、困而學之、又其次也、困而不學、民斯爲下矣。

書き下し文
孔子曰わく、生まれながらにしてこれを知る者は上(かみ)なり。学びてこれを知るものは次なり。困(くるし)みてこれを学ぶは又其の次なり。困みて学ばざる、民斯れを下(げ)と為す。

英訳文
Confucius said, “He who knows by nature is the best. He who knows by learning is the next best. He who learns by efforts is the next best. He who doesn’t learn is the worst as a man.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「生まれつきの物知りは最も良い。学んで物知りとなった者は次に良い。努力して学んでいる最中の者は次に良い。努力もせずに学びもしない者は人として最低だ。」

Translated by へいはちろう

学問を快楽だと考える拙者にとっては、良いも悪いもないでござるな。

拙者の理想は、今は自分の欲求に従って多くの知識を吸収して思索し、年を取ったら全て綺麗さっぱり忘れる事でござる。

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孔子の論語 季子第十六の八 君子に三畏あり

孔子の論語の翻訳439回目、季子第十六の八でござる。

漢文
孔子曰、君子有三畏、畏天命、畏大人、畏聖人之言、小人不知天命而不畏也、狎大人、侮聖人之言。

書き下し文
孔子曰わく、君子に三畏(さんい)あり。天命を畏(おそ)れ、大人(たいじん)を畏れ、聖人の言を畏る。小人は天命を知らずして畏れず、大人に狎(な)れ、聖人の言を侮る。

英訳文
Confucius said, “A gentleman stands in awe of three things. He stands in awe of heaven’s will, great men and words of the saint. A worthless man cannot understand heaven’s will and does not stand in awe of it. He takes liberties with great men and despises words of the saint.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人の手本たるべき君子は三つのものを畏れ敬う。天の意志を畏れ、徳の優れた偉大な人々を畏れ、聖人の言葉を畏れる。つまらない人間は天の意志を理解できず畏れ敬う事も無く、偉大な人々になれなれしくし、聖人の言葉を侮る。」

Translated by へいはちろう

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孔子の論語 季子第十六の七 君子に三戒あり

孔子の論語の翻訳438回目、季子第十六の七でござる。

漢文
孔子曰、君子有三戒、少之時、血氣未定、戒之在色、及其壯也、血氣方剛、戒之在鬪、及其老也、血氣既衰、戒之在得。

書き下し文
孔子曰わく、君子に三戒(さんかい)あり。少(わか)き時は血気未だ定まらず、これを戒(いまし)むること色に在(あ)り。其の壮なるに及んでは血気方(まさ)に剛(ごう)なり、これを戒むること闘(とう)に在り。其の老いたるに及んでは血気既(すで)に衰(おとろ)う、これを戒むること得(とく)に在り。

英訳文
Confucius said, “There are three admonitions for gentlemen. In young age, his passion is unstable. So he should control his sexual desire. In middle age, his passion becomes dynamic. So he should control his competitive spirit. In old age, his passion is declining. So he should control his desire for wealth.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人の手本たるべき君子には三つの戒めがある。若い時には血気や感情が不安定だから、色欲を抑制せねばならない。壮年期には血気盛んになるので、闘争心を抑制せねばならない。老いると血気は衰えてくるが、これまでに得たものに対する執着心やさらに得たいと思う欲望を抑制せねばならない。」

Translated by へいはちろう

なかなか現代にも通じる深いお言葉でござるが、だとしたら老いてなお財産や名誉への執着を失わない御仁の欲望はいったいどこから来るのでござろうか?

陳腐なことをいえば財産や名誉があれば他人から尊敬される、他人から敬意もって接してもらいたいという気持ちが執着につながるのかも知れないでござるな。孔子はそれを見抜いていたからこそ、孝や悌を説いたのでござろう。

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