ちょんまげ翻訳 和英」カテゴリーアーカイブ

孔子の論語 陽貨第十七の二十 孺悲、孔子に見えんと欲す

孔子の論語の翻訳465回目、陽貨第十七の二十でござる。

漢文
孺悲欲見孔子、孔子辭之以疾、將命者出戸、取瑟而歌、使之聞之。

書き下し文
孺悲(じゅひ)、孔子に見(まみ)えんと欲す。孔子辞するに疾(やまい)を以(もっ)てす。命を将(おこ)なう者、戸を出(い)ず。瑟(しつ)を取りて歌い、これをして聞かしむ。

英訳文
Ru Bei visited Confucius (without an appointment). Confucius did not meet him with pretended illness. When the errand left the door, Confucius sang and played the Se (a kind of stringed instrument) to inform Ru Bei that he pretended illness.

現代語訳
孺悲(じゅひ)が(約束もなく)孔子に会おうと訪れたが、孔子は仮病を使ってお会いになられなかった。取次ぎの者が戸口を出るとき、孔子は瑟(しつ)を奏でながら歌って仮病だと解るようになされた。

Translated by へいはちろう

孺悲(じゅひ:魯の家臣。)

少し経緯を説明すると、孺悲は魯公の命令で士人に対する葬礼の詳細を孔子に聞きにきたのでござる。

しかし礼について教えを乞う為に訪れるにも関わらず、約束もなく目上の者を尋ねるという非礼を孺悲がしたので、仮病という形でそれとなく諭したと言う事でござるな。

「また来ます。」と言って去った孺悲も次はちゃんと礼節を通して孔子に会う事ができて、士人の葬礼の詳細を教わったと礼記の雑記下に書かれているでござる。

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孔子の論語 陽貨第十七の十九 天何をか言うや。四時行なわれ、百物生ず

孔子の論語の翻訳464回目、陽貨第十七の十九でござる。

漢文
子曰、予欲無言、子貢曰、子如不言、則小子何述焉、子曰、天何言哉、四時行焉、百物生焉、天何言哉。

書き下し文
子曰わく、予(わ)れ言うこと無からんと欲す。子貢(しこう)が曰わく、子如(も)し言わずんば、則(すなわ)ち小子(しょうし)何をか述べん。子曰わく、天何をか言うや。四時(しじ)行なわれ、百物(ひゃくぶつ)生ず。天何をか言うや。

英訳文
Confucius said, “I won’t say a word anymore.” Zi Gong asked, “If you say nothing, about what can we discuss?” Confucius replied, “Heaven says nothing. But the four seasons rotate and lives are born. Heaven says nothing.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「私はもう何も言わない事にする。」
すると子貢(しこう)が、
「先生が何もおっしゃらなかったら、これから我々は何について論じれば良いというのですか。」
と言い、孔子は、
「天は何も語らない。しかし四季は巡り、生命は誕生する。天は何も語らない。(言葉以上に我々に語りかける)」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

子貢(しこう:姓は端木、名は賜、字は子貢。詳細は公冶長第五の九に。)

言葉を重んじる孔子が言うと説得力があるでござるな。時には言葉以上に沈黙が語る事もあるという事でござろうか。それとも時には孔子以外の事物に目を向けて見ろという教えでござろうか。

相手が子貢というところがまた良いでござるな。

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孔子の論語 陽貨第十七の十八 利口の邦家を覆すを悪む

孔子の論語の翻訳463回目、陽貨第十七の十八でござる。

漢文
子曰、惡紫之奪朱也、惡鄭聲之亂雅樂也、惡利口之覆邦家。

書き下し文
子曰わく、紫の朱を奪うを悪(にく)む。鄭声(ていせい)の雅楽(ががく)を乱るを悪む。利口の邦家(ほうか)を覆すを悪む。

英訳文
Confucius said, “I detest that purple spoils red. I detest that music of Zheng disturbs court music. I detest that glib vassals ruins a country.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「間色の紫が正色の赤を圧倒するのが憎い。鄭の淫らな音楽が宮廷の音楽を乱すのが憎い。口が上手いだけの輩が国をひっくり返すのが憎い。」

Translated by へいはちろう

「坊主憎けれりゃ、袈裟まで憎い。」ではないでござるが。乱れた世を憎むあまりに、色にまで文句を言うとは。

そういえば日本では袈裟の色も冠の色も紫が最上でござるよな。これも実は儒学と五行思想からきていて、漢代以降、五常の徳に仁=青、義=赤、礼=黄、智=白、信=黒をあてて、帝王の色として紫を用いていたからだそうでござる。冠位十二階が紫・青・赤・黄・白・黒の順でござるな。

でも近現代の中国で一般に皇帝の色とされるのは黄色でござるよな。なぜそうなったかは諸説あるそうでござるが、まったく歴史は面白いでござる。

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孔子の論語 陽貨第十七の十七 巧言令色鮮なし仁

孔子の論語の翻訳462回目、陽貨第十七の十七でござる。

漢文
子曰、巧言令色、鮮矣仁。

書き下し文
子曰(い)わく、巧言令色、鮮(すく)なし仁。

英訳文
Confucius said, “People who use compliments and a put-on smile have little virtue.”

現代語訳
先生がおっしゃいました、
「言葉巧みに世辞を言い、愛想笑いの上手い人間に人格者はいないものだ」

Translated by へいはちろう

学而第一の三と同じでござるな。

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孔子の論語 陽貨第十七の十六 古者、民に三疾あり

孔子の論語の翻訳461回目、陽貨第十七の十六でござる。

漢文
子曰、古者民有三疾、今也或是之亡也、古之狂也肆、今之狂也蕩、古之矜也廉、今之矜也忿戻。古之愚也直、今之愚也詐而已矣。

書き下し文
子曰わく、古者(いにしえ)、民に三疾(さんしつ)あり。今や或いは是(これ)亡(な)きなり。古(いにしえ)の狂や肆(し)、今の狂や蕩(とう)。古の矜(きょう)や廉(れん)、今の矜や忿戻(ふんれい)。古の愚や直、今の愚や詐(さ)のみ。

英訳文
Confucius said, “In ancient times, people had three defects. Now, I guess that these got worse. Ancient idealists followed their belief. Now, they are just slack. Ancient bigots were honest. Now, they are quick to take offense. Ancient fools were obedient. Now, they are liars.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「昔の人々には三つの欠点があったが、今ではさらに悪くなってる様に思う。昔の理想家は自分の信念に従ってやりたいように行動したが、今はだた無秩序に行動する。昔の頑固者は清廉だったが、今はすぐ怒る癇癪持ちだ。昔の愚か者は素直だったが、今はただの嘘つきだ。」

Translated by へいはちろう

このように昔の美点を褒めて今の欠点を正そうとする事は、それ自体は間違った事ではないのでござるが…

大切なのは、「自ら手本となる事」と「改善の道筋を与えて、後は相手を信じる事」でござるな。

この二つができないのであれば、人の上に立つ君子にはなれないと思う次第。そうでなければ単なる不平家と言われても仕方ないでござろう。

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