論語」カテゴリーアーカイブ

孔子の論語 学而第一の十二 礼の用は和を貴しと為す

孔子の論語の翻訳12回目、学而第一(第一巻)の十二でござる。

漢文
有子曰、禮之用和爲貴、先王之道斯爲美、小大由之、有所不行、知和而和、不以禮節之、亦不可行也。

書き下し文
有子曰わく、礼の用は和を貴しと為す。先王の道も斯れを美となす。小大これに由るも行なわれざる所あり。和を知りて和すれども礼を以てこれを節せざれば、亦行なわるべからず。

英訳文
You Zi said, “The work of courtesy is to maintain social harmony. Ancient wise kings were virtuous at this point. However, even if there is harmony, it may not be good social order. We should maintain social order by courtesy even if we live in harmony and know harmony. ”

現代語訳
有子がおっしゃいました、
「礼儀の意義とは社会の調和を保つ事にある。古代の聖王たちの美徳もこの点にある。しかしながらたとえ調和があったとしても、社会秩序が良く保たれるとは限らない。調和を知り調和の中で生きていたとしても、礼儀によって社会の秩序は保たれるべきである。」

Translated by へいはちろう

またどこかで読んだ様なフレーズが、そう十七条憲法の第一条の有名すぎるフレーズ「和を以って貴しとなす」のオリジナルがこの文でござる。ただ有子と聖徳太子の文の視点の違いが中々興味深くて、それぞれの時代背景や立場などを考えた上で両方の文を見比べると、それだけで1冊の本になるような勢いでござる。無知な拙者にはまず無理でござるけど。

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孔子の論語 学而第一の十一 三年父の道を改むること無きを、孝と謂うべし

 孔子の論語の翻訳11回目、学而第一(第一巻)の十一でござる。

漢文
子曰、父在觀其志、父沒觀其行、三年無改於父之道、可謂孝矣。

書き下し文
子曰わく、父在(いま)せば其の志しを観、父没すれば其の行いを観る。三年父の道を改むること無きを、孝と謂(い)うべし。

英訳文
Confucius said, “Evaluate a man by his aspiration while his father is alive.
and evaluate a man by his acts after his father was dead. Three years after his father’s death, if he still conducts his father’s way, he can be called a dutiful son.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました
「(人間は)父親が生きている間はその志によって評価すべきで、父親の死後はその行為によって評価すべきである。もし父親の死後3年間父親のやり方を変えることが無ければ、孝行な人間と言って良いだろう。」

Translated by へいはちろう

「父親にもよるだろう」と言うのは儒学では野暮というものでござる。また今回の文は単に孝行という事だけでなく、世代交代の時の政治的配慮について言及しているとの解釈もできるでござるな。

世襲による封建制度によって社会が運営されていた当時にあっては、主人の代替わりの時は変革の時でもあったのでござる。国家であれば大臣も入れ替わるし、家庭であれば主な使用人も入れ替わる。しかしそれにともない短い期間であまりにドラスティックに変革を押し進めてしまえば、それについていけない者もでるし、経験不足から色々と無理もでてくる。だから3年ほどの時間をかけてゆっくりと変革をするべきだという意味も含まれているのでござろう。

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孔子の論語 学而第一の十 夫子は温良恭倹譲、以てこれを得たり

孔子の論語の翻訳10回目、学而第一(第一巻)の十でござる。

漢文
子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政、求之與、抑與之與、子貢曰、夫子温良恭儉譲以得之、夫子之求之也、其諸異乎人之求之與。

書き下し文
子禽、子貢に問いて曰わく、夫子の是(こ)の邦に至るや、必らず其の政を聞く。これを求めたるか、抑々(そもそも)これを与えられたるか。子貢が曰わく、夫子は温良恭倹譲、以てこれを得たり。夫子のこれを求むるや、其れ諸(こ)れ人のこれを求むるに異なるか。

英訳文
Zi Qin asked Zi Gong, “The master is asked about politics whenever he arrives at every country. Does the master demand it? Or they demand it?” Zi Gong replied, “The master’s personality is gentle, obedient, respectful, modest and humble. So they desire the master to ask about politics. The master’s method how to ask for differs from the others.”

現代語訳
子禽が子貢に尋ねました、
「(孔子)先生が各国を訪れる度に政治について相談を受けます、これは先生が求めた事なのですか?それとも彼らの方から求めた事なのですか?」
子貢はこう答えました、
「先生の人格が紳士的で素直で恭しく慎ましくそして謙っておられるから、彼らの方から先生に会うことを望むのだ、先生が求められる方法は他の人々とは違うようだね。」

Translated by へいはちろう

子禽(しきん:姓は陳、名は亢、字は子禽。孔子の弟子。)

子貢(しこう:姓は端木、名は賜、字は子貢。詳細は公冶長第五の九に。)

さて今回の文を理解するには当時の時代背景、特に論客や説客と言った人々についての理解が必要になるのでござる。孔子を一論客と言うのはちょっと問題があるのでござるが、当時の論客たちは各国を尋ねて回り、自らの意見を取り入られて(家臣に取り立てられて)身を立てるのが常でござった。各国の王侯たちがこぞって孔子の話を聞きたいと望むその理由を子貢は孔子の人柄のおかげであると言っているのでござる。意外というか当たり前というか孔子を軽んじて門前払いをした王侯もいたのでござる。

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孔子の論語 学而第一の九 終わりを慎み遠きを追えば、民の徳厚きに帰す

 孔子の論語の翻訳9回目、学而第一(第一巻)の九でござる。

漢文
曾子曰、愼終追遠、民徳歸厚矣。

書き下し文
曾子曰わく、終わりを慎み遠きを追えば、民の徳、厚きに帰す。

英訳文
Zeng Zi said, “People’s virtue will be enhanced if funerals and memorial services for ancestors are held cordially.”

現代語訳
曾子がおっしゃいました
「もし(領主によって)葬式や先祖の供養が手厚く行われれば、(それに影響されて)民衆の徳は向上するでしょう。」

Translated by へいはちろう

上に立つものが自らの親や先祖を敬う気持ちを態度で表すことによって、民衆を感化すべし。と説いているのでござるな。これは国などに限らずどんな集団にも当てはまることで、自ら率先して正しい行いをすることで周囲の人間を感化する事はどんな言葉よりも集団の道徳観念を向上させるものでござる。すると今度は何を持って正しいとするか・・・が問題になる事もあるのでござるが。

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孔子の論語 学而第一の八 過てば則ち改むるに憚ることなかれ

 孔子の論語の翻訳8回目、学而第一(第一巻)の八でござる。

漢文
子曰、君子不重則不威、學則不固、主忠信、無友不如己者、過則勿憚改。

書き下し文
子曰わく、君子、重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず、忠信を主とし、己に如(し)からざる者を友とすることなかれ、過てば則ち改むるに憚ること勿(な)かれ。

英訳文
Confucius said, “Gentlemen are undignified if they are frivolous, and they aren’t stubborn after learning. They should attach importance to loyalty and honesty and shouldn’t be a friend with worse people than themselves, and should correct their mistakes without hesitation. ”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「君子というものは重々しくなければ威厳を失い、学べば偏見を持たぬものだ。真心と誠実さに重きを置いて人格的に劣るものたちと交際してはいけない。そして自らに誤りがあればただちに正すべきである。」

Translated by へいはちろう

全体として何が言いたいのか拙者には解りかねるのでござるが、個々はなるほどと思わされるでござるな。論語は孔子の死後に編纂されたものだし現存している物はさらにその後の時代の物でござるからこういう文があっても不思議ではないのでござる。

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