ちょんまげ翻訳 和英」カテゴリーアーカイブ

孔子の論語 為政第二の十九 直きを挙げて諸れを枉れるに錯けば則ち民服す

 孔子の論語の翻訳35回目、為政第二の十九でござる。

漢文
哀公問曰、何爲則民服、孔子對曰、擧直錯諸枉、則民服、擧枉錯諸直、則民不服。

書き下し文
哀公問うて曰わく、何を為さば則ち民服せん。孔子対(こた)えて曰わく、直(ただし)きを挙げて諸(こ)れを枉(まが)れるに錯(お)けば則ち民服す。枉れるを挙げて諸れを直きに錯けば則ち民服ぜず。

英訳文
Marquis Ai asked, “What should I do to make the people follow me?” Confucius replied, “If you appoint honest people and make them oversee dishonest people, the common people obey Your Excellency’s will. If you appoint dishonest people and make them oversee honest people, the common people never obey Your Excellency’s will.”

現代語訳
哀公が孔子に「どうすれば民衆が私に従ってくれるだろうか?」と尋ねられ、孔子はこう答えられました、
「もしあなたが誠実な人間を登用して不誠実な人間の上に置けば、民衆は御意志に従いましょう。もしあなたが不誠実な人間を登用して誠実な人間の上に置けば、民衆は決して御意志に従う事は無いでしょう。」

Translated by へいはちろう

前回の記事で言っていた孔子が魯の哀公(BC494-BC468、爵位は侯爵で現代の感覚で言えば魯国の王様)に仕えていた時のエピソードで、人材登用の時の判断基準を述べているのでござる。

ただ何を持って「誠実」とするか判断が難しいところで、儒学を重んじた漢代の郷挙里選制が結果として多くの贈収賄や汚職を招いて漢が滅ぶ原因の一つになった事は皮肉な話でござるな。その後中国では魏の九品官人法・隋唐の科挙など次第に能力に重きを置くようになっていったのでござる。ただそれらの時代や現代でも贈収賄や汚職があった(ある)事を考えれば、これはもう簡単に答えの出る問題では無く、「せめて自らは誠実であろう」と心がけたいものでござる。

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孔子の論語 為政第二の十八 言に尤寡なく行に悔寡なければ、禄は其の中に在り

 孔子の論語の翻訳34回目、為政第二の十八でござる。

漢文
子張學干祿、子曰、多聞闕疑、愼言其餘、則寡尤、多見闕殆、愼行其餘、則寡悔、言寡尤行寡悔、祿在其中矣。

書き下し文
子張、禄を干(もと)めんことを学ぶ。子曰わく、多く聞きて疑わしきを闕(か)き、慎みて其の余りを言えば、則ち尤(とがめ)寡(すく)なし。多く見て 殆(あや)うきを闕き、慎みて其の余りを行えば、則ち悔い寡なし。言に尤寡なく行(こう)に悔寡なければ、禄は其の中に在り。

英訳文
Zi Zhang asked about how to become a bureaucrat and Confucius replied, “You should listen to many opinions and speak only chosen opinions from them, and you can avoid being criticized. You should observe many things and act only chosen things from them, and you can avoid regretting. If you avoid both being criticized and regretting, you can become a bureaucrat.”

現代語訳
子張が孔子に官僚となり王から俸禄をもらうにはどうすれば良いのか尋ね、孔子はこう答えられました、
「多くの意見を聞いて、その中から疑わしいものを取り除いて意見を言うようにすれば、他人から非難される事が少なくなるだろう。多くの物事を見て、その中から悪いものを取り除いて行動に反映させれば、後悔する事が少なくなるだろう。言葉を非難されず、行動に後悔がないならば、王の信頼を得て仕える事がかなうだろう。」

Translated by へいはちろう

今回の文を説明しようとするととても長くなるのでござるが、当時の中国は官僚制度の黎明期で王が一族や有力者に領土を与えて分担統治させる制度から、王が任命した官僚が代理統治する中央集権体制への過渡期でござる。官僚として仕官するにはその才幹や人となりで王か側近の信頼を得なければならず、ゆえに多くの立身出世を志す若者が孔子の元に集まっていた訳でござる。孔子自身も一時期、魯の国に仕えていたし、孔子の弟子で宰相(王の代わりに政務を行う大役)になった人物もいたのでござる。

さて文章自身の意味でござるが、「人の信頼を得るには、見聞を広めて言行を慎みなさい。」と言う事でござるな。 至極もっともでござる。

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孔子の論語 為政第二の十七 これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らざると為せ

孔子の論語の翻訳33回目、為政第二の十七でござる。

漢文
子曰、由、誨女知之乎、知之爲知之、不知爲不知、是知也。

書き下し文
子曰わく、由よ、女(なんじ)にこれを知ることを誨(おし)えんか。これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らざると為せ。是(これ)知るなり。

英訳文
Confucius said, “Zhong You, I shall teach you what is ‘knowing’. It is to admit what you know as what you know, and what you don’t know as what you don’t know. This is true ‘knowing’.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「仲由子路(ちゅうゆうしろ)よ、お前に “知る” と言う事を教えてあげよう。 それは知っている事を知っていると認め、知らない事を知らないと認めることだ。これこそ本当に “知る” と言う事だ。」

Translated by へいはちろう

今回の文も有名でござるな、よく「知ったかぶりをするな」の様な解釈もされるでござるがそれだけでなく。「自分の無知に気づきなさい」と言う解釈もあるでござる。いわゆるソクラテスの「無知の知」と同じ解釈でござるな。

ソクラテス「無知の知」
彼は何も知らないのに何かを知っていると信じており、
これに反して私は何も知りはしないが、知っているとも思っていない。

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孔子の論語 為政第二の十六 異端を攻むるは斯れ害のみ

 孔子の論語の翻訳32回目、為政第二の十六でござる。

漢文
子曰、攻乎異端、斯害也已矣。

書き下し文
解釈1. 子曰わく、異端を攻(おさ)むるは斯(こ)れ害のみ。
解釈2. 子曰わく、異端を攻(せ)むるは斯れ害のみ。

英訳文
1. Confucius said, “To learn heresy produces only bad effects.”
2. Confucius said, “To attack opposite opinions produces only bad effects.”

現代語訳
1.孔子がおっしゃいました、
「聖人の道に外れた学問を学ぶ事は害にしかならない。」
2.孔子がおっしゃいました、
「自分に敵対する説や意見を攻撃しても害にしかならない。」

Translated by へいはちろう

今回の文には全く逆の意味を持つ解釈が存在するので二つ掲載したでござる。上の解釈が朱子による解釈で日本ではこちらの解釈される事が多いでござるな。朱子は「攻」の字を「学問などを修める」と言う意味で解釈したのでこの様になったのでござる。下は字のまま「攻める」という意味で解釈した文で、この説を取る方も多いでござるな。この様に論語には時代や人によって色々な解釈があるので「自ら考える」事がとても重要なのでござる。

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孔子の論語 為政第二の十五 学んで思わざれば則ち罔し

 孔子の論語の翻訳31回目、為政第二の十五でござる。

漢文
子曰、學而不思則罔、思而不學則殆。

書き下し文
子曰わく、学んで思わざれば則ち罔(くら)し、思うて学ばざれば則ち殆(あや)うし。

英訳文
Confucius said, “If you learn without thinking, you cannot understand truly. If you think without learning, you will be self-righteous.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「もし学びながら思考しなければ、本当に物事を理解する事など出来ない。もし学ばずに思考すれば独善(ひとりよがり)に陥ってしまって危険である。」

Translated by へいはちろう

まさに然り、でござるな。むしろ学び、思考する、それこそが学問の喜びでは無いかと思うのでござる。なお学校とかは「その事を学ぶ」ための場所だと拙者は思う次第。

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