このブログにしては最近順調に更新中の、いつか使ってみたい英語表現シリーズ。
fiddlesticks!
ばかばかしい! / くだらない!
いつか使ってみたいとは言っても結構古風な表現で、拙者はこれまでこの言葉を使っている人を見たことはないでござる。実は現在、モンゴメリの “赤毛のアン / Anne of Green Gables” を読んでいて、その中で孤児だったアンを引き取り育てることになったマリラ・カスバートという女性がよく口にしていて気に入ってしまったのでござる。ちなみに電子書籍版で検索してみたら、マリラは作中で7回もこの言葉を使っていたでござる。
未婚のまま初老を迎えたマリラにとってアンは初めての子育てでござる。気は優しいが厳格な性格のマリラはアンを立派な大人にしようと厳しく教育するのでござるが、想像力がたくましく好奇心旺盛なアンはお説教されたり自分のしたい事を禁止されたりすると独特の表現でマリラの説得を試みる。するとマリラが、”fiddlesticks!” と切って捨てる。例えとしては非常に的外れでござるが、そのやりとりがなんだか漫才のボケとツッコミのようで妙にこの言葉を気に入ってしまったという訳でござる。
“Will you please call me Cordelia?” she said eagerly. “Call you Cordelia? Is that your name?” “No-o-o, it’s not exactly my name, but I would love to be called Cordelia. It’s such a perfectly elegant name.” “I don’t know what on earth you mean. If Cordelia isn’t your name, what is?” “Anne Shirley,” reluctantly faltered forth the owner of that name, “but, oh, please do call me Cordelia. It can’t matter much to you what you call me if I’m only going to be here a little while, can it? And Anne is such an unromantic name.” “Unromantic fiddlesticks!” said the unsympathetic Marilla. “Anne is a real good plain sensible name. You’ve no need to be ashamed of it.”
Lucy Maud Montgomery / Anne of Green Gables 第三章より
マリラは上の例のように相手の言った言葉を繰り返した後につづけて、「~ですって? ばかばかしい!」という様な形で使う事が多いでござる。
なお語源を調べてみると fiddle (フィドル)というのがアイリッシュダンスなどの民俗音楽で使われるバイオリンの事を指す言葉であり、fiddlestick でそれを演奏するための棒(弓)というのが本来の意味のようでござる。これら二つの語は今でもバイオリンや弓や棒を指す言葉として使われるみたいでござるが、だいたい17世紀頃から「ばかばかしい事、くだらない事」というような意味でも使われるようになったみたいでござるな。
フィドルはクラシック音楽で使われるバイオリンとは違い、演奏者が一人で弓を使って普通に演奏する事もあるのでござるが、もう一人が横から棒を使って叩いて二人で演奏する事もあるそうでござる。その様子は楽しげでありながらも何処か馬鹿みたいに見えたのかも知れないと拙者は推測する次第でござる。また fiddlesticks と同じ意味の言葉として fiddle-de-dee というのもあり、「馬鹿騒ぎをする」という意味の fiddle-faddle という動詞もあるでござるよ。