孔子の論語 子路第十三の二十四 郷人の善き者はこれを好み、其の善からざる者はこれを悪くまんには如かざるなり

孔子の論語の翻訳337回目、子路第十三の二十四でござる。

漢文
子貢問曰、郷人皆好之何如、子曰、未可也、郷人皆惡之何如、子曰、未可也、不如郷人之善者好之、其不善者惡之也。

書き下し文
子貢(しこう)問いて曰わく、郷人(きょうじん)皆これを好まば何如。子曰わく、未(いま)だ可ならざるなり。郷人皆これを悪(にく)まば何如。子曰わく、未だ可ならざるなり。郷人の善き者はこれを好み、其の善からざる者はこれを悪くまんには如(し)かざるなり。

英訳文
Zi Gong asked, “How about a person who is praised by all villagers?” Confucius replied, “He is not enough.” Zi Gong asked, “How about a person who is hated by all villagers?” Confucius replied, “He is not enough. A person who is praised by good villagers and hated by bad villagers is the best.”

現代語訳
子貢(しこう)が尋ねました。
「地元の人々全員から称賛される様な人物はいかがでしょうか?」
孔子は、
「それではまだ十分とは言えない。」
と答えられました。子貢(しこう)がさらに、
「地元の人々全員から憎まれる様な人物はいかがでしょうか?」
と尋ねると、孔子は、
「それではまだ十分と言えない。最も良いのは地元の善人から称賛され、悪人からは憎まれる様な人物だ。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

子貢(しこう:姓は端木、名は賜、字は子貢。詳細は公冶長第五の九に。)

何度か言及しているでござるが、儒学を官学として採用した漢の時代の官吏登用制度である郷挙里選制はまさに今回の文の内容を表したような制度でござる。

簡単にいうと郷土で儒学的評判の高い若者を地元有力者に推薦させることによって、人格的に高潔な人物の登用を意図したものであったのでござるが、結果として贈賄や汚職が横行し地方豪族の人脈・地盤が強化されて漢滅亡の原因の一つとなったのでござる。

問題なのは人物を評価する手段ではなく、評価する側の人間の能力と品性だということでござるな。

子路第十三の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 子路第十三を英訳を見て下され。