孔子の論語 泰伯第八の八 詩に興り、礼に立ち、楽に成る

孔子の論語の翻訳195回目、泰伯第八の八でござる。

漢文
子曰、興於詩、立於禮、成於樂。

書き下し文
子曰わく、詩に興(おこ)り、礼に立ち、楽(がく)に成る。

英訳文
Confucius said, “You must be inspired by poem, realize your duty by the courtesy and complete yourself by music.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「人は詩によって奮い立ち、礼によって自己の責務を自覚し、音楽によって自らを完成させる。」

Translated by へいはちろう

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孔子の論語 泰伯第八の七 士は以て弘毅ならざるべからず

孔子の論語の翻訳194回目、泰伯第八の七でござる。

漢文
曾子曰、士不可以不弘毅、任重而道遠、人以爲己任、不亦重乎、死而後已、不亦遠乎。

書き下し文
曾子(そうし)曰わく、士は以て弘毅(こうき)ならざるべからず。任(にん)重(おも)くして道遠し。仁(じん)以て己が任と為す、亦(また)重からずや。死して後已(や)む、亦遠からずや。

英訳文
Zeng Zi said, “A person who aspires the Way must have broad-mind and strong-will. His mission is very important. And his road is very far. His mission is to be benevolent. How important it is! He never stop aspiring after the Way until his death. How far it is!”

現代語訳
曾子(そうし)がおっしゃいました、
「儒学の道を志す者は、広い心と強い意志を持たねばならない。その使命は重く、道は遠い。仁者となる事を使命とする、なんと重い使命だろう。その道を死ぬまで求め続ける、なんと遠い道のりだろう。」

曾子(Zeng Zi, 姓は曾、名は参、字は子與。詳細は里仁第四の十五に。)

とても重々しい言葉でござるが、仁というものを崇高なものに押し上げてしまいすぎている感は否めないでござるな。

述而第七の二十九で孔子は「欲すればすぐ隣にあるのが仁」とおっしゃっているでござる。拙者も僭越ながら孔子と同じ考えで、曾子の様に叙情的な言葉に酔って仁を形骸化させるよりは、身近な仁を一つ一つ積みかさねる方が良いと考える次第。

仁は使命ではなく喜びでござる。誰もが抱くささやかな真心をどうして重荷と感じられるでござろうか?必要なのは強い意志ではなく、素直な心でござる。

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孔子の論語 泰伯第八の六 大節に臨んで奪うべからず

孔子の論語の翻訳193回目、泰伯第八の六でござる。

漢文
曾子曰、可以託六尺之孤、可以寄百里之命、臨大節而不可奪也、君子人與、君子人也。

書き下し文
曾子(そうし)曰わく、以て六尺(りくしゃく)の孤(こ)を託(たく)すべく、以て百里(ひゃくり)の命(めい)を寄(よ)すべく、大節(たいせつ)に臨(のぞ)んで奪(うば)うべからず。君子人(くんしじん)か、君子人なり。

英訳文
Zeng Zi said, “A person, to whom infant successor’s care can be left, to whom country affairs can be left, who is never discouraged when he is faced to an important matter. Can we call him a gentleman? Yes, indeed.”

現代語訳
曾子(そうし)がおっしゃいました、
「幼君の世話を任せることができ、国家の大命を任せることができ、大事に臨んでいささかもひるむところが無い。そんな人物は人格者と呼べるだろうか、まさに人格者である。」

Translated by へいはちろう

曾子(Zeng Zi, 姓は曾、名は参、字は子與。詳細は里仁第四の十五に。)

なんとなく武士道に通じるところもあり、お侍たちが好みそうな文章でござるな。

しかし一個人の能力や人格に国家万民の運命が左右されてしまう政治制度の方がどうかと思う次第。

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孔子の論語 泰伯第八の五 能を以て不能に問い、多きを以て寡なきに問う

孔子の論語の翻訳192回目、泰伯第八の五でござる。

漢文
曾子曰、以能問於不能、以多問於寡、有若無、實若虚、犯而不校、昔者吾友嘗從事於斯矣。

書き下し文
曾子(そうし)曰わく、能(のう)を以て不能に問い、多きを以て寡(すく)なきに問い、有れども無きが若(ごと)く、実(み)つれども虚(むな)しきが若く、犯されて校(むく)いず。昔者(むかし)、吾が友、嘗(かつ)て斯(ここ)に従事(じゅうじ)せり。

英訳文
Zeng Zi said, “I had a friend. He took lessons by talentless people even though he had a talent. He took lessons by ignorant people even though he had a wide knowledge. He behaved humbly even though he had a lot of virtue. He never revenged for damage.”

現代語訳
曾子(そうし)がおっしゃいました、
「才能がありながら非才の人々にも教えを乞い、博識でありながら無知な人々にも教えを乞い、多くの美徳を持ちながら自分はまだ至らぬと謙虚に振舞い、他者から被害を受けても仕返しなどしない。そういう友達がかって私には居た。」

Translated by へいはちろう

曾子(Zeng Zi, 姓は曾、名は参、字は子與。詳細は里仁第四の十五に。)

この友人は顔回(がんかい)を指すと言われているでござる。謙虚さと向学心の高さがまさに顔回のイメージにぴったりなので反論の余地が無いでござるな。

「実るほど、頭(こうべ)の垂れる、稲穂かな」

という言葉があるのでござるが、ぜひともこういう人物になりたいものでござる。

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孔子の論語 泰伯第八の四 君子の道に貴ぶ所の者は三つ

孔子の論語の翻訳191回目、泰伯第八の四でござる。

漢文
曾子有疾、孟敬子問之、曾子言曰、鳥之將死、其鳴也哀、人之將死、其言也善、君子所貴乎道者三、動容貌、斯遠暴慢矣、正顔色、斯近信矣、出辭氣、斯遠鄙倍矣、笾豆之事、則有司存。

書き下し文
曾子(そうし)、疾(やまい)あり。孟敬子(もうけいし)これを問う。曾子言いて曰わく、鳥の将(まさ)に死なんとするや、其の鳴くこと哀し。人の将に死なんとするや、其の言うこと善し。 君子の道に貴(たっと)ぶ所の者は三つ。容貌(ようぼう)を動かしては斯(ここ)に暴慢(ぼうまん)を遠ざく。顔色を正しては斯に信に近づく。辞気を出(い)だしては斯に鄙倍(ひばい)を遠 ざく。笾豆(へんとう)の事は則ち有司(ゆうし)存せり。

英訳文
Zeng Zi had got a illness. Meng Jing Zi visited him. Zeng Zi said, “The proverb says – ‘A bird cries sadly when it  is dying, A person leaves a good will when he is dying.’ (So please listen to my last words carefully.) Gentlemen must keep three teachings – ‘You must watch your behavior to avoid being rough. You must watch your expression to correspond with your words. You must watch your language to avoid being vulgar.’ You can leave manners at the rites to specialists.”

現代語訳
曾子(そうし)が病で倒れました。孟敬子(もうけいし)が見舞いにやってきたので曾子は彼におっしゃいました、
「”鳥が死に行こうとする時、その鳴き声は悲しげである。人が死に行こうとする時、良い言葉を残す” という諺があります (どうか私の言葉を注意してお聞き下さい)。人格者が守らねばならない教えが三つあります。自分の振る舞いに注意し、乱暴にならないようにしなさい。自分の表情に注意し、言葉と違わぬようにしなさい。自分の言動に注意し、下品にならないようにしなさい。(これらさえ守れば)祭祀における些細な礼法などは専門家にまかせてもよいのです。」

Translated by へいはちろう

曾子(Zeng Zi, 姓は曾、名は参、字は子與。詳細は里仁第四の十五に。)

孟敬子(もうけいし:魯の実質的支配者である三桓氏の一つ、孟孫氏の一族。名は捷。)

拙者はこのブログで「自己を律する」と儒学を表現する事が多いのでござるが、その具体的な方法でござるな。

振る舞い、表情、言動。全て自分の心が表れると曾子はおっしゃっているのでござる。これは「うわべをとりつくろえ」とおっしゃっているのではもちろん無くて、その様な形で表れてしまう自分の内心を恥じて正しなさい。ということでござるな。

拙者自身、恥じることは多々あるのでござるが正すまではなかなか手が回らないこの現実。

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