ちょんまげ翻訳 和英」カテゴリーアーカイブ

孔子の論語 子路第十三の十七 速やかならんと欲すれば則ち達せず、小利を見れば則ち大事成らず

孔子の論語の翻訳330回目、子路第十三の十七でござる。

漢文
子夏爲魯筥父宰、問政、子曰、毋欲速、毋見小利、欲速則不達、見小利則大事不成。

書き下し文
子夏(しか)、筥父(きょほ)の宰(さい)と為(な)りて、政(まつりごと)を問う。子曰わく、速(すみ)やかならんと欲すること毋(な)かれ。小利(しょうり)を見ること毋かれ。速やかならんと欲すれば則(すなわ)ち達(たっ)せず。小利を見れば則ち大事(だいじ)成らず。

英訳文
Zi Xia became the magistrate of Ju Fu and asked about politics. Confucius replied, “Do not rush. Do not pursue a small profit. If you rush, you will fail. If you pursue a small profit, you can not accomplish a great task.”

現代語訳
子夏(しか)が筥父(きょほ)の街の長官になった時に政治について尋ねました。孔子は、
「事を急いではいけない。小さな利益にとらわれてはいけない。急げば事は失敗に終わるし、小さな利益にとらわれては大事を成す事はできない。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

子夏(しか:姓は卜、名は商。字は子夏。詳細は雍也第六の十三に。)

「急いては事を仕損じる」ということわざがあるでござるな。英語では Haste makes waste. というほぼ同じ意味のことわざがあるのでござるが、後半部とのバランスを考えてif構文で訳したでござる。

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孔子の論語 子路第十三の十六 近き者説び遠き者来たる

孔子の論語の翻訳329回目、子路第十三の十六でござる。

漢文
葉公問政、子曰、近者説、遠者來。

書き下し文
葉公(しょうこう)、政(まつりごと)を問う。子曰わく、近き者説(よろこ)び遠き者来たる。

英訳文
Magistrate of She asked about politics. Confucius replied, “If the local people are delighted with your government, many people will come from far away.”

現代語訳
葉県(しょうけん)の長官が政治について尋ねました。孔子は、
「近くの者が喜ぶような政治をすれば、遠くの者がそれを慕ってやって来ます。」
と答えました。

Translated by へいはちろう

葉公(しょうこう:氏は沈、名は諸梁、字は子高。楚の葉県の長官。詳細は子路第十三の十八に。)

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孔子の論語 子路第十三の十五 如し君たることの難きを知らば、一言にして邦を興こすに幾からずや

孔子の論語の翻訳328回目、子路第十三の十五でござる。

漢文
定公問、一言而可以興邦有諸、孔子對曰、言不可以若是、其幾也、人之言曰、爲君難、爲臣不易、如知爲君之難也、不幾乎一言而興邦乎、曰、一言而可喪邦有 諸、孔子對曰、言不可以若是、其幾也、人之言曰、予無樂乎爲君、唯其言而樂莫予違也、如其善而莫之違也、不亦善乎、如不善而莫之違也、不幾乎一言而喪邦乎。

書き下し文
定公(ていこう)問う。一言にして以(もっ)て邦(くに)を興こすべきこと諸(こ)れ有りや。孔子対(こた)えて曰わく、言(げん)は以て是(か)くの若(ごと)くなるべからざるも、其れ幾(ちか)きなり。人の言に曰わく、君(きみ)たること難(かた)し、臣たること易(やす)からずと。如(も)し君たることの難きを知らば、一言にして邦を興こすに幾(ちか)からずや。曰わく、一言にして以て邦を喪(ほろ)ぼすべきこと諸れ有りや。孔子対えて曰わく、言は以て是くの若くなるべからざるも、其れ幾きなり。人の言に曰わく、予(わ)れは君たることを楽しむこと無し。唯だ其の言にして予れに違(たが)うこと莫(な)きを楽しむなりと。如し其れ善にしてこれに違うこと莫(な)くんば、亦(また)善からずや。如し不善にしてこれに違うこと莫くんば、一言にして邦を喪ぼすに幾(ちか)かからずや。

英訳文
Marquis Ding asked, “Is there any proverb that can develop our country?” Confucius replied, “A proverb cannot develop a country. But there is a proverb almost the same. They say, ‘It is difficult to be a monarch. It is not easy to be a vassal.’ If you understand difficulty of being a monarch, you can develop your country.” Marquis Ding asked, “Is there any proverb that can ruin our country?” Confucius replied, “A proverb cannot ruin a country. But there is a proverb almost the same. They say, ‘I do not enjoy being a monarch. I just enjoy that everyone obeys my order.’ If your order is right, it is also right that everyone obeys your order. But if your order is not right and everyone obeys your order, your order can ruin your country.”

現代語訳
定公(ていこう)が尋ねました、
「一言で国を盛んにするような、そんな言葉はあるだろうか?」
孔子は、
「言葉が国を盛んにする事はできませんが、それに近い意味の言葉があります。”君主である事は難しい、家臣である事は簡単ではない。” もしあなたが君主である事の難しさを理解なされるのであれば、この言葉は国を盛んにする事ができると言えます。」
と答えられました。定公は続いて尋ねました、
「一言で国を滅ぼすような、そんな言葉はあるだろうか?」
孔子は、
「言葉が国を滅ぼす事はできませんが、それに近い意味の言葉があります。”私は君主である事を楽しむのではない、人々が私の命令に従う事を楽しむのだ。” あなたの命令が正しければ、人々が命令に従う事も正しいと言えます。しかしあなたの命令が正しくなく、人々がその命令に従うとしたら、この言葉は国を滅ぼす事ができると言えます。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

定公(在位B.C.509~B.C.495。 名前は姫宋、爵位は侯爵。先代の昭公が三桓氏によって追放された後、魯公となった。孔子を重用して司寇(警察・司法責任者)に任じたが、次第に政務への熱意を失っていき礼儀を軽んじるようになる、失望した孔子は魯国を去って行った。)

儒学の政治指向は中央集権体制なので、自ずと君主の権限は強くなる。それゆえに君主の責任は非常に重大で、孔子は遠まわしにその自覚をうながしたのでござろう。

日本人の歴史観も儒学の影響が色濃いせいか、何かあれば君主の責任にして済ませてしまおうという傾向があるでござるな。世がうまく治まれば君主のおかげで、世が乱れれば君主が悪いからだと決め付けるのは典型的な儒学思考でござる。

しかし実際には当時の孔子自身が魯の実質的支配者である三桓氏から権力を奪還して定公に戻そうと苦労したように、歴史上の君主のほとんどは有力家臣や豪族たちの利害調整役という程度でござったろう。

ときどき傑出した君主があらわれて権力を掌握して、善政を布けば名君と呼ばれ、悪政を布けば暴君と呼ばれるのでござる。しかもこれらの基準は時代とともに変わったりもするので、その辺をよくよく調べると面白いでござるよ。

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孔子の論語 子路第十三の十四 如し政あらば、吾を以いずと雖も、吾其れこれを与り聞かん

孔子の論語の翻訳327回目、子路第十三の十四でござる。

漢文
冉子退朝、子曰、何晏也、對曰、有政、子曰、其事也、如有政、雖不吾以、吾其與聞之。

書き下し文
冉子(ぜんし)、朝(ちょう)より退く。子曰わく、何ぞ晏(おそ)きや。対(こた)えて曰わく、政(まつりごと)あり。子曰わく、其れ事(こと)ならん。如(も)し政あらば、吾(われ)を以(もち)いずと雖(いえど)も、吾其れこれを与(あずか)り聞かん。

英訳文
Ran Zi came back from the palace. Confucius asked, “Why have you come back so late?” Ran Zi replied, “We had a problem of national affairs” Confucius said, “It is probably a problem of Ji family’s affairs. If there is a problem of national affairs, they surely consult me even if they don’t leave it to me.”

現代語訳
冉子(ぜんし)が朝廷より戻られました。孔子が、
「随分遅かったな。」
と尋ねると、冉子は、
「国務上の問題があったのです。」
と答えられました。すると孔子は、
「国務ではなく、お前の仕える季孫氏の私事だろう。もしも国務上の問題であれば、私に任せないとしても何らかの相談があるはずだ。」
とおっしゃいました。

Translated by へいはちろう

冉子(ぜんし:姓は冉、名は求、字は子有。詳細は八佾第三の六に。)

いかにも孔子らしい儒学的な発想でござる。

良い悪いは別として、現代日本でも元総理とか会社の相談役とか一線を退いた人物がご意見番として影響力を保ち続ける事はよくあることでござるな。

世代交代をスムーズに行うために自然と出来上がったシステムなのでござろうが、一線を退いたが故に見えてくる面があったり無責任な立場から自由な発想ができたりして、ついつい余計な口出しをする御仁もちらほらとおられるでござる。

困ったものだと思いつつも、そういう御仁を許容できないようでは口出しされても仕方がないとも思う次第。

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孔子の論語 子路第十三の十三 苟も其の身を正せば、政に従うに於てか何か有らん

孔子の論語の翻訳326回目、子路第十三の十三でござる。

漢文
子曰、苟正其身矣、於從政乎何有、不能正其身、如正人何。

書き下し文
子曰わく、苟(いやしく)も其の身を正せば、政(まつりごと)に従うに於(おい)てか何か有らん。其の身を正しくすること能(あた)わざれば、人を正しくすることを如何(いかに)せん。

英訳文
Confucius said, “If you are righteous, you can manage politics without troubles. If you are not righteous, how can you lead other people rightly?”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「もし自らが正しければ、政治を行うぐらいは何でもない。もし自らが正しくなければ、どうやって他人を正しく導くことができるだろうか。」

Translated by へいはちろう

孔子が何度も言い方を変えておっしゃってるのは、「まず人の上に立つ人間が(自分自身が)正しくあれば、下の人間は自然とそれに従う」という事でござる。

言い換えてみれば、「率先して正しくあろうと思わない人間は人の上に立つ資格が無い」という事でござろうか。拙者はできれば人の上にも下にも立ちたくないのでござるが。

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