孔子の論語 陽貨第十七の四 鷄を割くに焉んぞ牛刀を用いん

孔子の論語の翻訳449回目、陽貨第十七の四でござる。

漢文
子之武城、聞絃歌之聲、夫子莞爾而笑曰、割鷄焉用牛刀、子游對曰、昔者偃也、聞諸夫子、曰、君子學則愛人、小人學道則易使也、子曰、二三子、偃之言是也、前言戲之耳。

書き下し文
子、武城(ぶじょう)に之(ゆ)きて絃歌(げんか)の声を聞く。夫子(ふうし)莞爾(かんじ)として笑いて曰わく、鷄を割(さ)くに焉(いずく)んぞ牛刀(ぎゅうとう)を用いん。子游(しゆう)対(こた)えて曰わく、昔者(むかし)偃(えん)や諸(こ)れを夫子に聞けり、曰わく、君子道を学べば則(すなわ)ち人を愛し、小人道を学べば則ち使い易しと。子の曰わく、二三子(にさんし)よ、偃の言(げん)是(ぜ)なり。前言はこれに戯(たわむ)れしのみ。

英訳文
Confucius and his disciples went to Wu Cheng. They heard a singing voice and sounds of the strings. Confucius smiled and said, “It is not necessary to use a butcher knife to cut chicken.” Zi You said, “Master, you said before, ‘With learning (courtesy and music), a gentleman becomes loving people, and even a worthless man becomes easy to deal.'” Confucius said, “Everyone, he is right. I’m just kidding.”

現代語訳
孔子と弟子達が武城(ぶじょう)の街を訪れた時、琴の音にあわせて歌声が聞こえて来た。
孔子はにっこりと笑って、
「鶏をさばくのに牛刀を用いる必要は無いだろう。(こんな小さな街に礼楽とは大げさな)」
とおっしゃいました。すると武城の長官を務めている子游(しゆう)が、
「以前先生から、”礼楽を学ぶ事によって、人格者は人を愛するようになり、つまらぬ人間でさえ扱いが楽になる。” と聞いた事があります。」
と言いました。孔子は、
「お前達、子游の言葉は正しい(人は皆、礼楽を学ぶべきだ)。先の言葉は冗談だよ。」
とおっしゃいました。

Translated by へいはちろう

子游(しゆう:姓は言、名は偃、字は子游。詳細は雍也第六の十四に。)

子游は孔子に褒めてもらえると思ったのに、大げさと言われて思わず言い返してしまったという事でござろうか。

ちなみに「鷄を割くに焉んぞ牛刀を用いん。」は小さな事に対して大げさな事をするという意味の言葉でござるが、英語では「(taking) a sledgehammer to crack a nut (くるみを割るのにスレッジハンマーを使う)」と言うそうでござる。スレッジハンマーとはコンクリートなどを砕く巨大なハンマーの事でござるが、イメージが豪快すぎたので採用しなかったでござる。

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