孔子の論語 子罕第九の一 子、罕に利を言う

孔子の論語の翻訳209回目、子罕第九の一でござる。

漢文
子罕言利與命與仁。

書き下し文
子、罕(まれ)に利を言う、命と与(とも)にし仁と与にす。

英訳文
Confucius hardly talked about benefit. He referred to destiny and benevolence whenever he talked about benefit.

現代語訳
孔子が利益について語られる事はほとんどなかった。利益について語られる時には、必ず天命や仁徳についても言及された。

Translated by へいはちろう

「利」を語る事を潔癖なまでに避けようとする儒家と、人々の助け合いによる「交利」を説いた墨家の議論については、里仁第四の十二里仁第四の十六でも触れているでござるが、ここでは西洋哲学の視点を入れて両者の差異を考えてみたいと思うでござる。

墨家の主張する「兼愛交利」の考え方は西洋哲学でいうところの功利主義に近いものがあり、人々が幸福になるという結果に重きを置いた考え方でござる。「最大多数の最大幸福」というジェレミ・ベンサムの有名な言葉があるでござるな。

反して儒家の主張する「利」を否定し「義」を重んじる考え方は、ソクラテスの「単に生きるのではなく、善く生きる」という言葉の考え方に近いものがあるでござる。結果よりも手段や過程を重んじる考え方でござるな。

西洋哲学の功利主義に関しても激しい議論が展開されているので、そちらも面白いでござるよ。

子罕第九の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 子罕第九を英訳を見て下され。