孔子の論語 里仁第四の十二 利に放りて行えば、怨み多し

 孔子の論語の翻訳78回目、里仁第四の十二でござる。

漢文
子曰、放於利而行、多怨。

書き下し文
子曰わく、利に放(よ)りて行えば、怨(うら)み多し。

英訳文
Confucius said, “If you act for your own profits, you will be blamed by people.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「もし自分の利益のためだけに行動すれば、人々の恨みを買うだろう。」

Translated by へいはちろう

ここで言われている「利」とは自分自身のための利益の事でござるな。儒学では「利」を求める事を善しとはせず、「兼愛」による社会全体の利益を説いた墨家と激しく対立したのでござる。

儒家は自分の利益を求める「私利」を批判して、墨家は社会全体の利益である「公利(交利)」を主張していたのにも関わらず、なぜかお互い譲らなかったのでござる。

ちなみに拙者が頻繁に老荘思想、墨家、法家の思想や言葉を用いるのは、儒学を批判するのが目的では無く、儒学を理解する上での非常に重要なアンチテーゼと考えているからでござる。

確かに儒学の祖と言われるのは孔子でござるが、百家争鳴と呼ばれる先秦諸学派(春秋戦国時代の思想家たち)との激しい議論を経て、時には意見を吸収しながら儒学は成立したのでござる。

現存最古の論語注釈書であり三国時代以降の儒学に多大な影響を与えた「論語集解(古注)」の著者である魏の何晏(かあん)からして儒学者とは言い難く、「老子道徳論」も著して王弼(おうひつ)と共に老荘思想の大家としての評価も高いのでござる。

里仁第四の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの孔子の論語 里仁第四を英訳を見て下され。