ちょんまげ翻訳 和英」カテゴリーアーカイブ

孔子の論語 郷党第十の五 圭を執れば、鞠躬如たり

孔子の論語の翻訳245回目、郷党第十の五でござる。

漢文
執圭鞠躬如也、如不勝、上如揖、下如授、勃如戰色、足蹜蹜如有循也、享禮有容色、私覿愉愉如也。

書き下し文
圭(けい)を執(と)れば、鞠躬如(きくきゅうじょ)たり。勝(た)えざるが如(ごと)し。上(あ)ぐることは揖(ゆう)するが如く、下(くだ)すことは授(さず)くるが如く、勃如(ぼつ じょ)として戦(おののく)色あり。足は蹜蹜如(じょ)として循(したが)うこと有り。享礼(きょうれい)には容色(ようしょく)あり。私覿(してき)には愉愉如(ゆゆじょ)たり。

英訳文
Confucius held a mace of his lord respectfully like he was not qualified to held it, when he visited other countries as an envoy. He did not lift it up higher than his hands when he bowed. And he did not get down it lower than his hands when he gave something to others. His expression was strained and frightened. He walked with short step regularly. His expression got mild when he offered presents from his lord. His expression got pleasant when he greeted his private acquaintances.

現代語訳
主命を受けて外交使節として他国へ赴いた時には、孔子は主君より授かった圭(けい:外交使節の証である笏)を恭しく捧げ持つようにした。その笏を両手を揃えておじぎする時の手の位置より上には上げず、誰かに物を渡す時の手の位置より下には下げなかった。顔色は緊張で張り詰めて畏怖の色さえあった。足取りはそろそろと細かく規則正しく歩いた。主君からの贈り物を捧げる時には和やかな表情になられた。個人的な知り合いである他国の大臣たちと挨拶を交わす時には愉しげな表情をされた。

Translated by へいはちろう

郷党第十の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 郷党第十を英訳を見て下され。

孔子の論語 郷党第十の四 公門に入るに、鞠躬如たり

孔子の論語の翻訳244回目、郷党第十の四でござる。

漢文
入公門、鞠躬如也、如不容、立不中門、行不履閾、過位色勃如也、足躩如也、其言似不足者、攝齊升堂鞠躬如也、屏氣似不息者、出降一等、逞顔色怡怡如也、沒階趨進翼如也、復其位踧踖如也。

書き下し文
公門(こうもん)に入(い)るに、鞠躬如(きくきゅうじょ)たり。容(い)れられざるが如(ごと)くす。立つに門に中(ちゅう)せず。行くに閾(しきい)を履(ふ)まず。位(くらい)を過ぐれば、色(いろ)勃如(ぼつじょ)たり、足(あし)躩如(かくじょ)たり。其の言うこと、足らざる者に似たり。斉(もすそ)を摂(かか)げて堂に升(のぼ)るに、鞠躬如(きくきゅうじょ)たり。気を屏(おさ)めて 息をせざる者に似たり。出でて一等(いっとう)を降(くだ)れば、顔色(がんしょく)を逞(はな)って怡怡如(いいじょ)たり。階(かい)を沒(つく)せば、趨(はし)り進むこと翼如(かくじょ)たり。其の位に復(かえ)れば踧踖如(しゅくせきじょ)たり。

英訳文
Confucius was bending himself when he passed through the gate of the palace, like he could not pass the gate. He stood aside at the gate. He never stepped on the threshold. He walked at brisk pace with a strained face when he passed through below the seat of his lord. He spoke little at his seat, like he could not speak. He was bending himself when he ascended near his lord. He lowered his breath in front of his lord, like he could not breathe. His expression got mild every step when he descended steps. His brisk step was graceful like a bird spreading its wings when he returned to his seat. He behaved respectfully at his seat.

現代語訳
孔子が宮廷の御門を通る時には、身をかがめて遠慮がちに通り過ぎた。門の中央を通るような事はせず、敷居を踏む事も無かった。主君の御席の下を通り過ぎる時には緊張した面持ちで小刻みに通り過ぎた。席に着いたらまるで口が利けなくなった様に無言でおられた。主君のお側へ上る時には身をかがめ、朝服の裾を掴んで引きずらないようにした。主君の御前では息をひそめてかしこまった。御用が終わって階段を下る時には、一段ごとに表情が和やかになった。階段を下りて席へ戻るまでは翼を拡げた鳥の様に優雅に歩かれた。席に戻った後は、恭しい態度を保っておられた。

Translated by へいはちろう

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孔子の論語 郷党第十の三 君召して擯たらしむれば、色勃如たり、足躩如たり

孔子の論語の翻訳243回目、郷党第十の三でござる。

漢文
君召使擯、色勃如也、足躩如也、揖所與立、左右其手、衣前後襜如也、趨進翼如也、賓退、必復命曰、賓不顧矣。

書き下し文
君(きみ)召(め)して擯(ひん)たらしむれば、色(いろ)勃如(ぼつじょ)たり。足(あし)躩如(かくじょ)たり。与(とも)に立つ所を揖(ゆう)すれば、其の手を左右にす。衣(ころも)の前後(ぜんご)襜如(せんじょ)たり。趨(はし)り進むには翼如(よくじょ)たり。賓(ひん)退けば必らず復命(ふくめい)して曰わく、賓顧(かえり)みずと。

英訳文
Confucius walked at brisk pace with a strained face when he attend to guests by his lord’s order. He stretched his arms to the right and left when he bowed to other ministers, and his robe moved elegantly. His brisk step was graceful like a bird spreading its wings. After guests left the palace, he reported to his lord without fail that guests had never looked back because they were satisfied.

現代語訳
孔子が君主の命令で賓客をもてなす時には、緊張した面持ちでそろそろと小刻みに歩かれた。一緒に接待役を務めている他の大臣におじぎをする時には、両手を右や左に頭と共に相手へ向けられてお辞儀されて礼服が体と共に優雅に動いた。小走りに歩まれる様は翼を拡げた鳥の様に優雅であった。賓客が退出される時に見送りで付き添った後は、君主の所まで必ず戻って来て、「(もてなしに満足していたので)お客様達は一度も振り返る事無く帰られました。」と報告された。

Translated by へいはちろう

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孔子の論語 郷党第十の二 朝にして下大夫と言えば、侃々如たり

孔子の論語の翻訳242回目、郷党第十の二でござる。

漢文
朝與下大夫言侃侃如也、與上大夫言誾誾如也、君在踧踖如也、與與如也。

書き下し文
朝(ちょう)にして下大夫(かたいふ)と言えば、侃々如(かんかんじょ)たり。上大夫(じょうたいふ)と言えば、誾々如(ぎんぎんじょ)たり。君在(いま)せば踧踖如(しゅくせきじょ)たり、與與如(よよじょ)たり。

英訳文
In the Court, Confucius behaved friendly toward lower ministers, behaved modestly toward higher ministers, and behaved respectfully and calmly toward his lord.

現代語訳
朝廷に出仕した時の孔子は、下位の大臣に対しては和やかに振舞われ、上位の大臣に対しては慎み深く振舞われ、主君がおわす時には恭しい態度でありながらも余裕を失わずに振舞われた。

Translated by へいはちろう

どことなく詩文のような雰囲気のある原文でござるが、文字数にバラつきがあるから特に詩文を意識した訳では無いのでござるかな?

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孔子の論語 郷党第十の一 孔子、郷党に於て恂々如たり

孔子の論語の翻訳241回目、郷党第十の一でござる。

漢文
孔子於郷黨恂恂如也、似不能言者、其在宗廟朝廷、便便言唯謹爾。

書き下し文
孔子、郷黨(きょうとう)に於(おい)て恂々如(じゅんじゅんじょ)たり。言うこと能(あた)わざる者に似たり。其の宗廟(そうびょう)、朝廷(ちょうてい)に在(いま)すや、便々(べんべん)として言い、唯(た)だ謹(つつ)しめり。

英訳文
Confucius spoke a little in his hometown modestly, like he could not speak. But at the ancestral temple of the country and the Court, he spoke fluently. He behaved modestly in that case, too.

現代語訳
孔子は故郷に帰った時はまるで口がきけなくなったかの様にあまりお話にならず、謙虚な態度をとっておられた。しかし先祖を祀る社や朝廷に居る時には流暢にお話をされた、その場合でも謙虚な態度は失われなかった。

Translated by へいはちろう

キリスト教の聖書には「預言者は故郷では敬われない」という一節があるのでござるが、それが思い出されるでござるな。

孔子がいくら勉学に励み、修身して偉大な人物となっても若い頃の失敗や「若気のいたり」を知る故郷の人々の前では謙虚な態度にならざるを得ないのが人情と言うものでござる。

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