A watched pot never boils. 待つ身は長い

わりと海の近くに住んでいるというのに、8月も半ば過ぎてからようやく今年初めて海に行ったという、いつか使ってみたい英語表現シリーズ。

A watched pot never boils.
待つ身は長い。/ あせりは禁物。

原文を意訳すると「鍋を見ていてもお湯は沸かない」って感じでござろうか。とくに説明の必要がないほど実に解りやすいことわざでござるな。逆に日本語訳として当てられる事の多い、日本のことわざの「待つ身は長い」の方があまりピンと来ない感じがするくらいでござる。一応説明すると鍋を火にかけてお湯が沸くのをすぐ側で待っていると、お湯が沸くまでの時間がとても長く感じられる…、つまりは短気をいましめることわざでござるな。

拙者もあまりにもお腹が空いている時、「ああ、もうインスタントラーメンでいいや」とラーメンを作るために鍋に水を入れて火にかけた後、お湯が沸くまでの時間が非常に長く感じるでござる。そういう時は具材として一緒に煮込む野菜を切ったり、薬味のネギを刻んだりしてお湯が沸くのを待つと良いでござるな。

なお pot の部分を kettle と言い換えることもしばしばでござる。ちなみにこのことわざがいつ頃から使われているのかは不明でござるが、1848年に出版されたエリザベス・ギャスケルの小説「メアリー・バートン ~ マンチェスター物語」の中にこのことわざがでてくるみたいでござるな。

“Come, now,” said Mrs. Sturgis, “my master told me to see you to bed, and I mun. What’s the use of watching? A watched pot never boils, and I see you are after watching that weathercock. Why now, I try never to look at it, else I could do nought else. My heart many a time goes sick when the wind rises, but I turn away and work away, and try never to think on the wind, but on what I ha’ getten to do.”

Elizabeth Gaskell / Mary Barton – A Tale of Manchester Life 第31章より

またアメリカ建国の父の一人、ベンジャミン・フランクリンの自伝にも同じような言葉がでてくるようでござる。

Finally another Breakfast is ordered. One Servant runs for fresh Water, another for Coals. The Bellows are plied with a will. I was very Hungry; it was so late; “a watched pot is slow to boil,” as Poor Richard says. Madame sets out for Paris & leaves us. We begin to eat.

Benjamin Franklin / Paris 1776-1785より

このことわざは生活に根ざしたものなのでかなり古くから使われていても不思議ではないでござるが、もしかしたら19世紀頃の印刷技術の向上による書物の大量普及によって英語圏全体に広がったのものかも知れないでござるな。