孔子の論語 衛霊公第十五の十一 鄭声を放ちて佞人を遠ざけよ

孔子の論語の翻訳400回目、衛霊公第十五の十一でござる。

漢文
顔淵問爲邦、子曰、行夏之時、乘殷之輅、服周之冕、樂則韶舞、放鄭聲、遠佞人、鄭聲淫、佞人殆。

書き下し文
顔淵(がんえん)、邦(くに)を為(おさ)めんことを問う。子曰わく、夏(か)の時を行い、殷(いん)の輅(ろ)に乗り、周の冕(べん)を服(ふく)し、楽(がく)は則(すなわ)ち韶舞(しょうぶ)し、鄭声(ていせい)を放ちて佞人(ねいじん)を遠ざけよ。鄭声は淫(いん)、佞人は殆(あや)うし。

英訳文
Yan Yuan asked how to govern the country. Confucius replied, “Use the calendar of Xia. Ride on the carriage of Yin. Wear the hat of Zhou. Play and dance the Shao music. Never play the music of Zheng. Never keep company with a glib talker. The music of Zheng is obscene. A glib talker is danger.”

現代語訳
顔淵(がんえん)が国を治める方法を尋ねました。孔子は、
「夏の暦を用い、殷の馬車に乗り、周の礼服を着て、舞楽は韶を演奏しなさい。鄭の音楽は禁止して、口先だけの輩と付き合ってはならない。鄭の音楽は淫らで風紀に良くないし、口先だけの輩は国を危うくするからだ。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

顔淵(がんえん:顔回とも呼ぶ。姓は顔、名は回、字は子淵。詳細は公冶長第五の九に。)

述而第七の十三でも韶の音楽を絶賛し、陽貨第十七の十八でも鄭の音楽と口達者な人間を嫌っておられるでござるな。

口達者云々はともかく、昔の偉い人がこういう主観的な意見を残すと後世の人々が迷惑するのでござるよな。現在はともかく、漢の時代あたりの文化人は儒学の価値観にしばられて大変だったでござろう。歴史的には儒学を奨励していた漢が滅んで魏の時代になると建安の風骨として儒学から解き放たれた新しい文化が花咲くのでござるが。

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