孔子の論語 子路第十三の六 其の身正しければ、令せざれども行わる

孔子の論語の翻訳319回目、子路第十三の六でござる。

漢文
子曰、其身正、不令而行、其身不正、雖令不從。

書き下し文
子曰わく、其の身正しければ、令(れい)せざれども行わる。其の身正しからざれば、令すと雖(いえど)も従わず。

英訳文
Confucius said, “If you are righteous, people act without your order. If you are not righteous, people do not obey your order.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「自分自身が正しくさえあれば、命令などしなくとも人々は行動する。自分自身が正しくなければ、例え命令をしたとしても人々は従いはしない。」

Translated by へいはちろう

この考え方の解り易い例として、儒学には「大義名分」という言葉があるでござるな。現在は自らの行動の正当性を担保するための根拠などを指すこの言葉は、元々は「自らの立場(名)による責任や役割(分)があり、経験則(主に論語などの四書五経)によって培われた価値判断(大義)によってその正邪善悪が決まる」という意味なのでござる。

「正」とか「義」とかを使わずに言えば、人々の上に立つ人間の行動は多くの人々に影響を与えるので慎重にせねばならない。また影響を受ける人々が納得しないような事はしてはならないし、どうしてもする必要があるのならば納得をさせるようにしなければならない。という事でござる。

孟子は「天は有徳の者に命じて天下を統治させる(天子)、天子が徳を失った時には別の者に天命を下すが、天の意志は万民を通じて示される」という革命論を主張し、天の意志=万民の意志という事を暗に示唆しているのでござる。この王朝交代の際に必要とされるのが今でいうところの大義名分でござるな。

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