孔子の論語 泰伯第八の七 士は以て弘毅ならざるべからず

孔子の論語の翻訳194回目、泰伯第八の七でござる。

漢文
曾子曰、士不可以不弘毅、任重而道遠、人以爲己任、不亦重乎、死而後已、不亦遠乎。

書き下し文
曾子(そうし)曰わく、士は以て弘毅(こうき)ならざるべからず。任(にん)重(おも)くして道遠し。仁(じん)以て己が任と為す、亦(また)重からずや。死して後已(や)む、亦遠からずや。

英訳文
Zeng Zi said, “A person who aspires the Way must have broad-mind and strong-will. His mission is very important. And his road is very far. His mission is to be benevolent. How important it is! He never stop aspiring after the Way until his death. How far it is!”

現代語訳
曾子(そうし)がおっしゃいました、
「儒学の道を志す者は、広い心と強い意志を持たねばならない。その使命は重く、道は遠い。仁者となる事を使命とする、なんと重い使命だろう。その道を死ぬまで求め続ける、なんと遠い道のりだろう。」

曾子(Zeng Zi, 姓は曾、名は参、字は子與。詳細は里仁第四の十五に。)

とても重々しい言葉でござるが、仁というものを崇高なものに押し上げてしまいすぎている感は否めないでござるな。

述而第七の二十九で孔子は「欲すればすぐ隣にあるのが仁」とおっしゃっているでござる。拙者も僭越ながら孔子と同じ考えで、曾子の様に叙情的な言葉に酔って仁を形骸化させるよりは、身近な仁を一つ一つ積みかさねる方が良いと考える次第。

仁は使命ではなく喜びでござる。誰もが抱くささやかな真心をどうして重荷と感じられるでござろうか?必要なのは強い意志ではなく、素直な心でござる。

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