孔子の論語 公冶長第五の十二 我人の諸れを我に加えんことを欲せざるは、吾亦諸れを人に加うること無からんと欲す

孔子の論語の翻訳104回目、公冶長第五の十二でござる。

漢文
子貢曰、我不欲人之加諸我也、吾亦欲無加諸人、子曰、賜也、非爾所及也。

書き下し文
子貢(しこう)が曰わく、我人の諸(こ)れを我に加えんことを欲せざるは、吾亦(また)諸れを人に加うること無からんと欲す。子曰わく、賜(し)や、爾(なんじ)の及ぶ所に非ざるなり。

英訳文
Zi Gong said, “The thing that I do not want to be done by others, I also do not want to do it to others.” Confucius said, “Zi Gong, that is beyond you.”

現代語訳
子貢(しこう)が、
「私は人からされたく無いと思うことは、また人にもしない様にしたいと思います。」
と言い、孔子は、
「子貢よ、それはお前に出来る事では無い。」
とおしゃいました。

Translated by へいはちろう

簡単に言うと「己の欲せざる所は人に施す勿れ(顔淵第十二の二衛霊公第十五の二十四)」、でござるが、しかし一刀両断でござるな。確かにこれが出来れば人間同士のいざこざの大半が無くなってしまうでござろう。そもそもこの言葉を他人に対して偉そうに言った時点で多くの人は不愉快に思うはず。当たり前過ぎる正論ほど人を苛立たせる物はあまり無いでござろう。

有名な川柳を一つ、
その通り だから余計に 腹が立ち

さて何故子貢が孔子に一刀両断にされたかと言うと、 憲問第十四にもあるとおり弁の立つ子貢はまさに正論によって他人の反論を封じてしまう事が多かったからでござる。人の意見を巧みな弁論によって封じ、その人格を否定する。そんな事をしている人間が「己の欲せざる所は人に施す勿れ」と賢しげに言った所で誰も聞きはしないでござろう。才気走る子貢の最大の欠点でござるな。そして才はともかく拙者もまさに同じ欠点を持っているので耳が痛いのでござるよ、自戒自戒。

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