孔子の論語 陽貨第十七の一 陽貨、孔子を見んと欲す

孔子の論語の翻訳446回目、陽貨第十七の一でござる。

漢文
陽貨欲見孔子、孔子不見、歸孔子豚、孔子時其亡也、而往拝之、遇諸塗、謂孔子曰、來、予與爾言、曰、懷其寳而迷其邦、可謂仁乎、曰、不可、好從事而亟失時、可謂知乎、曰、不可、日月逝矣、歳不我與、孔子曰、諾、吾將仕矣。

書き下し文
陽貨(ようか)、孔子を見んと欲す。孔子見(まみ)えず。孔子に豚(いのこ)を帰(おく)る。孔子其の亡(な)きを時として往(い)きてこれを拝(はい)す。塗(みち)に遇(あ) う。孔子に謂(い)いて曰わく、来たれ。予(わ)れ爾(なんじ)と言わん。曰わく、其の宝を懐(いだ)きて其の邦(くに)を迷わす、仁と謂うべきか。曰わく、不可なり。事に従うを好みて亟々(しばしば)時を失う、知と謂うべきか。曰わく、不可なり。日月逝(ゆ)く、歳(とし)我と与(とも)ならず。孔子の曰わく、諾(だく)。吾(われ)将(まさ)に仕えんとす。

英訳文
Yang Huo wanted to meet Confucius. Confucius didn’t meet him. Then Yang Huo sent Confucius a pig. Confucius went to Yang Huo’s house to express his gratitude when Yang Huo was not at his home. But Confucius ran across Yang Huo on the way. Yang Huo said, “Say, I want to talk with you. You don’t try to save this country even though you know how to save it. Is this benevolent?” Confucius replied, “No, it isn’t.” Yang Huo said, “You are losing your opportunity even though you want to engage in politics. Is this wisdom?” Confucius replied, “No, it isn’t.” Yang Huo said, “Time flies like an arrow.” Confucius said, “I see. I will serve you before long.”

現代語訳
陽貨(ようか)が孔子に会いたがっていたが、孔子はお会いになられなかった。そこで陽貨は孔子に豚を贈った(孔子が返礼にやって来た時に会おうとした)。孔子は陽貨の留守を見計らって返礼に赴いたが道の途中で陽貨に出会ってしまった。
陽貨が、
「ようやくあなたと話ができる。この乱れた国を救う宝玉のような知恵を持ちながら見過ごしている。それが仁と言えましょうか?」
と問うと、孔子は、
「いいえ、仁とは言えません。」
と答えられました。さらに陽貨が、
「日頃より政治に携わりたいと考えながらその機会を見過ごしている。それで知者と言えましょうか?」
と問うと、孔子は、
「いいえ、知者とは言えません。」
と答えられました。さらに陽貨が、
「日々は過ぎて行き、年月も待ってはくれませんよ。」
と言うと、孔子は、
「解りました。いずれあなたにお仕えしましょう。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

陽貨(ようか:陽虎とも呼ぶ。元々は魯の実質上の権力者の三桓氏の筆頭である季孫氏の家宰をしていたが、その季孫氏の実権を握る事によって次第に三桓氏をしのぐ政治権力を持つようになる。三桓氏の権力を一気に奪おうと費の街の長官である公山不擾と共にクーデターを起こすが敗れて亡命した。孔子と陽貨は容貌が似ており、子罕第九の五で孔子は陽貨と見間違われて危害にあっている。)

儒学的には悪役の陽貨でござるが、なかなか一世の傑物だけの物言いをするものでござる。

結局孔子はクーデターの失敗もあって陽貨に仕える事はなかったのでござるが、陽貨第十七の五で陽貨と一緒にクーデターを起こした公山不擾に招かれた時には乗り気なそぶりを見せているでござる。

この時期の孔子は魯公をないがしろにする三桓氏を排除するためには武力の行使もやむを得ないのではないかと、葛藤していたのではないでござろうか。

陽貨第十七の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 陽貨第十七を英訳を見て下され。