孔子の論語 泰伯第八の十二 三年学びて穀に至らざるは、得やすからざるのみ

孔子の論語の翻訳199回目、泰伯第八の十二でござる。

漢文
子曰、三年學不至於穀、不易得也已。

書き下し文
子曰わく、三年学びて穀(こく)に至らざるは、得やすからざるのみ。

英訳文
Confucius said, “There are few people who don’t want to become a bureaucrat after studying for three years.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「三年間勉学に励んだ後で、仕官したがらない人間は少ない。」

Translated by へいはちろう

この文はつまり孔子の元で学ぶ弟子のほとんどが、立身出世を求めて孔子もとへやってきたということでござるかな。

以前にも書いたのでござるが、当時はいわゆる官僚という存在が誕生して間もなかった時代でござる。それまでは豪族政治で、一族の人間に領地を与えて統治をさせるやり方であったのが、有能な人材を俸禄(給料)をもって召抱える官僚政治への過渡期であったのでござる。

もちろん有能なだけで仕官できたわけではなく、人材を求める諸侯や貴族たちへ自分を推薦してくれる人物も必要だったので各国の諸侯や貴族とコネがある孔子のもとに出世欲の強い若者たちが集まってくるのは至極当然のことでござった。

逆にそういう有能な人材を多く集める事は当時の有力者にとっても非常に重要なことで、自分の紹介した人物が出世をすれば自分の勢力や名声が増し、逆に何か罪を犯せば連座して罪に問われる危険もつきまとったのでござる。

世界的に見て日本の官僚が贈収賄などの汚職がとりわけ多いわけでは無いのでござるが、アジアの諸国で慢性的に官僚の汚職が絶えないのは儒学の影響だといわれているでござるな。

例えばある国では行政サービスを受ける場合には役人に賄賂を渡すのが慣例になっていたりするのでござる。もちろんその国でも違法な事なのでござるが、例えれば欧米などの飲食店で食事代の他にチップを払わなければならないように、もともと役人の給料が安くて賄賂を受け取って生活を立てる事が常態化しているのでござる。結果税金も安く押さえられているので行政サービスを受ける人が役人に直接金を払うという不可思議な受益者負担の法則が成り立っているのでござる。

もちろん近代法治国家において、こんな無駄の多い行政システムは言語道断なのでござるが、この様な常態化した慣習を打破するのがいかに難しいかという話なのでござる。

話を孔子の時代に戻すと、当時の官僚には逆に同族政治という悪しき旧習を打破して安定した中央集権政治を確立しようと努力して、最後には敵対勢力に殺されてしまった人物も少なくなかったのでござる。

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