孔子の論語 述而第七の二十八 人、己を潔くして以て進まば、其の潔きに与みせん

孔子の論語の翻訳178回目、述而第七の二十八でござる。

漢文
互郷難與言、童子見、門人惑、子曰、與其進也、不與其退也、唯何甚、人潔己以進、與其潔也、不保其往也。

書き下し文
互郷(ごきょう)、与(とも)に言い難(が)たし。童子(どうじ)見(まみ)ゆ。門人(もんじん)惑う。子曰わく、其の進むに与(くみ)するなり。其の退くに与せざるなり。唯だ、何ぞ甚(はなは)だしき。人、己を潔くして以て進まば、其の潔きに与みせん。其の往(おう)を保(ほ)せざるなり。

英訳文
It was difficult to communicate with people of Hu Xiang. (they had the reputation of being vulgar.) A boy from Hu Xiang asked to meet Confucius, and pupils frowned. Confucius said, “The boy came to improve himself, not to corrupt. Why can’t I teach him? I do believe in people’s pure heart when they purified their heart. But it depends on his efforts if he can become a good person or not after he goes back.

現代語訳
互郷(ごきょう)というあまり風評の良く無い村があった。道理の通じぬといわれたその村からある時一人の少年が孔子に会いたいとやって来たが、弟子たちは嫌な顔をした。
すると孔子がおっしゃいました、
「その少年は自分を向上させようとしてやって来たのだ、堕落するためでは無い。彼を導くことに何の問題があるだろうか? 私は清く純真な心で尋ねてきた者のその心を信じる。しかし帰ったあとで彼が良い人間となれるかは彼の努力次第だ。」

Translated by へいはちろう

この少年がその後どうなったのか、などと思索をめぐらせるのも一興でござるな。少年が孔子に何を求めて来たのか、何か魔法の様な素晴らしい教えが聞けると思ったのか、それとも立身出世の野心を抱いて来たのか、どちらにせよ孔子がまずおっしゃったのは「家に帰って親孝行しなさい」だったであろうと思うのでござる。

淡い期待を抱いてやってきた少年がそれを聞いて失望したか納得したかは解らないでござるが、それ故に「少年の努力次第」となるのでござる。

しかし一人孔子を訪ねて門を叩くその行動力があるならば、孔子が想像していたのとはまた違った形で村人から頼りにされ、尊敬される人物に成長したかも知れないでござる。

教育はしばしば種を蒔くことに例えられるのでござるが、畑に蒔かれず路傍に落ちた種子がまれにたくましく成長するのも醍醐味のひとつではないでござろうか。

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