孔子の論語 微子第十八の五 楚の狂接輿、歌いて孔子を過ぐ

孔子の論語の翻訳476回目、微子第十八の五でござる。

漢文
楚狂接輿歌而過孔子、曰、鳳兮鳳兮、何徳之衰也、徃者不可諌也、來者猶可追也、已而已而、今之從政者殆而、孔子下欲與之言、趨而辟之、不得與之言。

書き下し文
楚の狂接輿(きょうせつよ)、歌いて孔子を過ぐ、曰わく、鳳(おおとり)よ鳳よ、何ぞ徳の衰えたる。往(ゆ)く者は諌(いさ)むべからず、来たる者は猶(な)お追うべし。已(や)みなん已みなん。今の政(まつりごと)に従う者は殆(あや)うし。孔子下(お)りてこれと言(い)わんと欲す。趨(はし)りてこれを辟(さ)く。これを言うことを得ず。

英訳文
Jie Yu, the lunatic of Chu, sang a song passing Confucius, “Phoenix, phoenix,  you waste your virtue. It is useless to advise on the past. But I can advise on the future. Stop it. Stop it. A person who engages in politics is danger now.” Confucius got off the carriage and wanted to talk with him. But Confucius could not talk, because Jie Yu ran away.

現代語訳
楚の狂人・接輿(せつよ)という者が、孔子の側を歌いながら通り過ぎた。
「鳳(おおとり:鳳凰)よ、鳳よ、なんと徳を衰えさせたものだ。過ぎた事を言っても仕方ないが、これからの事はまだ間に合う。止めなさい、止めなさい。今の世に政治に関わるのは危険だ。」
孔子は馬車から降りて接輿と語り合いたいと思われたが、接輿は走って逃げてしまったので話ができなかった。

Translated by へいはちろう

接輿(せつよ:楚の狂人・隠者。姓は陸、名は通。楚昭王の時に政治が乱れたので、接輿は髪を剃って狂人のふりをして世を避けた。)

日本語で読むと解らないのでござるが、接輿の歌った詩は韻を踏んでいて、内容もさる事ながら接輿がただの狂人ではない事を表しているのでござる。

孔子はこの歌を聞いて接輿が只者ではないと思って語り合おうとしたが、逃げられてしまったという事でござる。

微子第十八の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 微子第十八を英訳を見て下され。