孔子の論語 顔淵第十二の一 一日己を克めて礼に復れば、天下仁に帰す

孔子の論語の翻訳290回目、顔淵第十二の一でござる。

漢文
顔淵問仁、子曰、克己復禮爲仁、一日克己復禮、天下歸仁焉、爲仁由己、而由人乎哉、顔淵曰、請問其目、子曰、非禮勿視、非禮勿聽、非禮勿言、非禮勿動、顔淵曰、囘雖不敏、請事斯語矣。

書き下し文
顔淵(がんえん)、仁を問う。子曰わく、己(おのれ)を克(せ)めて礼に復(かえ)るを仁と為す。一日己を克めて礼に復れば、天下仁に帰(き)す。仁を為すこと己に由(よ)る。而(しか)して人に由らんや。顔淵曰わく、請(こ)う、其の目(もく)を問わん。子曰わく、礼に非(あら)ざれば視ること勿(な)かれ、礼に非ざれば聴くこと勿れ、礼に非ざれば言うこと勿れ、礼に非ざれば動くこと勿れ。顔淵曰わく、回(かい)、不敏(ふびん)なりと雖(いえど)も、請う、斯(そ)の語を事(こと)せん。

英訳文
Yan Yuan asked about benevolence. Confucius replied, “It is to discipline yourself and to return the starting point of the courtesy. If you discipline yourself and return to the courtesy a day, the world will return to the benevolence. It is all up to you. You cannot depend on others.” Yan Yuan asked, “Please tell me the point.” Confucius replied, “Do not look if it is not according with the courtesy. Do not listen if it is not according with the courtesy. Do not speak if it is not according with the courtesy. Do not act if it is not according with the courtesy.” Yan Yuan said, “Although I am an idiot, I will put your words into practice.”

現代語訳
顔淵(がんえん)が仁について尋ねました。孔子は、
「自分に打ち勝って礼の原点に立ち戻る事だ。もし一日自分を律して礼に立ち戻るならば、世界が仁の心に立ち戻るだろう。すべては自分次第なのだ。他人を責めてはいけない。」
と答えられました。顔淵がさらに、
「どうかその要点を教えてください。」
と尋ねると、孔子は、
「礼に適わぬ時は見ない、礼に適わぬ時は聞かない、礼に適わぬ時は言わない、礼に適わぬ時は動かない。」
と答えられました。顔淵は、
「私は愚か者ではありますが、先生のお言葉を実践したいと思います。」
と言いました。

Translated by へいはちろう

顔淵(がんえん:顔回とも呼ぶ。姓は顔、名は回、字は子淵。詳細は公冶長第五の九に。)

拙者がとても好きな一文でござる。

一日己を克めて礼に復れば、天下仁に帰す。仁を為すこと己に由る。而して人に由らんや。

たった一日でも他人に対する敬意を心がけて行動すれば、自分の周囲にいる人々と真心や思いやりをお互いに感じる事が出来るようになる。全てのきっかけは自分自身にあるのであって、周囲を責めるのは間違いである。

もちろんこれを常に心がけるとなると凡人の悲しさ、ついつい感情に支配されてしまったりするのが実情。

顔淵第十二の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 顔淵第十二を英訳を見て下され。