聖徳太子による十七条憲法の翻訳、第十三条でござる。
原文
十三曰、諸任官者、同知職掌。或病或使、有闕於事。然得知之日、和如曾識。其以非與聞、勿防公務。
書き下し文
十三に曰く、諸(もろもろ)の官に任ぜる者、同じく職掌(しょくしょう)を知れ。或(ある)いは病し、或いは使(つかい)して、事を闕(おこた)ることあらん。然(しか)れども知ることを得る日には、和(あまな)うこと曽(かつ)てより識(し)れるが如(ごと)くせよ。それを与(あずか)り聞かずということを以(も)って、公務を妨(さまた)ぐることなかれ。
英訳文
All officers entrusted with government affairs must understand all your duties. Your work may sometimes be interrupted due to your illness or missions. But when you come back to the office, understand what you should do as if you had known it. And do not obstruct government affairs for the reason that you do not know it.
現代語訳
官職に任じられた者たちは、自分の職務をよく理解しなさい。病気になったり、出張をしたりして、職場を離れる事もあるだろう。しかし再び職務に戻った時には、以前よりも熟知しているかのように遅れを取り戻しなさい。職場に居なかった間の事は知らないと言って、公務を停滞させてはならない。
Translated by へいはちろう
官吏たちの職務態度に関する条文でござるな。こういう文章を見るとなんとなくさぞかし当時の官吏たちは職務怠慢であったであろうと思ってしまうのでござるが、そもそも当時は官僚制自体が導入されたばかりだと言う事を忘れてはならないでござるな。もちろん官僚制に代わる政治制度はあったのでござろうが、それを官僚制の価値基準ではかることはできないでござろう。
日本は明治維新以来、聖徳太子がはるか昔に目指していたような官僚制による中央集権体制が敷かれているので、十七条憲法を読むときにはついつい時代感覚というものを見失いがちになってしまうのでござる。しかし太子以前の豪族政治や、明治維新以前の武家政治を考慮せずに現代の物差しのみをもって十七条憲法を読むのは、正直もったいないと思う所存でござる。
今回の条文はどのような政治体制でも通用する内容だと思うので、決してその内容にケチをつけるつもりはないのでござるが、自分に対する戒めとして時代感覚を見失わないようにしたいと思う次第でござる。
※全条文の英訳を読みたい方は聖徳太子の十七条憲法を英訳をご覧くだされ。