孔子の論語の翻訳361回目、憲問第十四の十八でござる。
漢文
子貢曰、管仲非仁者與、桓公殺公子糾、不能死、叉相之、子曰、管仲相桓公覇諸侯、一匡天下、民到于今受其賜、微管仲、吾其被髪左衽矣、豈若匹夫匹婦之爲諒也、自経於溝涜而莫之知也。
書き下し文
子貢(しこう)が曰わく、管仲(かんちゅう)は仁者に非(あら)ざるか。桓公(かんこう)、公子糾(こうしきゅう)を殺して、死すること能わず。又たこれを相(たす)く。子曰わく、管仲、桓公を相(たす)けて諸侯(しょこう)に覇(は)たり、天下を一匡(いっきょう)す。民、今に到(いた)るまで其の賜(し)を受く。管仲微(な)かりせば、吾(われ)其れ髪(はつ)を被り衽(じん)を左にせん。豈(あに)に匹夫匹婦(ひっぷひっぷ)の諒(まこと)を為し、自ら溝涜(こうとく)に経(くび)れて知らるること莫(な)きが若(ごと)くならんや。
英訳文
Zi Gong asked, “Guan Zhong was not benevolent, was he? When Marquis Huan killed young lord Jiu, he did not follow his master to the grave. Moreover, he assisted Marquis Huan.” Confucius replied, “Guan Zhong made Marquis Huan become a supreme ruler and reformed the world. People receive benefit from him even now. If he had not existed, we would have been under the control of barbarians who have untidy hairs and queer clothes. Why can we compare him and foolish lovers who committed a double suicide in the ditch without being noticed?”
現代語訳
子貢(しこう)が尋ねました、
「管仲(かんちゅう)は仁者ではありませんね。桓公(かんこう)が主君である公子糾(こうしきゅう)を殺したというのに、殉死するどころか桓公に仕えるのですから。」
孔子は、
「管仲は桓公を覇者にして、天下を正したのだ。人々は今でもその恩恵を受けている。もし管仲がいなかったら、今頃我々はざんばら髪に服を左前に着るなどという蛮族の支配下で生活させられていたかも知れない。どうして溝の中で心中をはかって誰にもその死を気づいてもらえないような愚かな男女の誠実さと比べて良いだろうか。」
と答えられました。
Translated by へいはちろう
子貢(しこう:姓は端木、名は賜、字は子貢。詳細は公冶長第五の九に。)
管仲・桓公・公子糾(かんちゅう・かんこう・こうしきゅう:前回の憲問第十四の十七を参照。)
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