孔子の論語 先進第十一の二十五 子路、子羔をして費の宰たらしむ

孔子の論語の翻訳288回目、先進第十一の二十五でござる。

漢文
子路使子羔爲費宰、子曰、賊夫人之子、子路曰、有民人焉、有社稷焉、何必讀書然後爲學、子曰、是故惡夫佞者。

書き下し文
子路(しろ)、子羔(しこう)をして費(ひ)の宰(さい)たらしむ。子曰わく、夫(か)の人の子(こ)を賊(そこな)わん。子路が曰わく、民人(たみひと)あり、社稷(しゃしょく)あり、何ぞ必ずしも書を読みて然(しか)る後に学(がく)と為(な)さん。子曰わく、是(こ)の故(ゆえ)に夫(ふ)の佞者(ねいじゃ)を悪(にく)む。

英訳文
Zi Lu made Zi Gao the magistrate of Fei. Confucius said, “Zi Lu, you spoil him.” Zi Lu replied, “Fei has the people and he has to govern them. I think reading books is not the only way of learning.” Confucius said, “This is why I hate a glib talker.”

現代語訳
子路(しろ)が子羔(しこう)を費(ひ)の街の長官にしました。
孔子がこの事について、
「まだまだ未熟で学び足りない彼を駄目にしてしまうぞ。」
とおっしゃると、子路は、
「かの街には人民が住んでおり、子羔は彼らを統治せねばなりません。何も本を読むばかりが学ぶ道では無いでしょう。」
と反論しました。すると孔子が、
「これだから口先の上手い輩は嫌いなのだ。」
とおっしゃいました。

Translated by へいはちろう

子路(しろ:季路とも言う。姓は仲、名は由、字は子路。詳細は公冶長第五の七に。)

子羔(しこう:姓は高、名は柴、字は子羔。孔子の弟子の一人。子路が衛のお家騒動に巻き込まれて討ち死にした時、孔子は衛の乱を聞いて「ああ、柴(子羔)なら逃げてこようが、由(子路)は死ぬだろう」と嘆いたという。)

子路の言葉にも一理あるのでござるが、孔子は屁理屈だと感じたのでござろう。

例えば自動車免許の取得などを例に考えれば、仮免許も取っていない人間をいきなり車道に出したら事故を起こすに決まっているでござるな。

確かに書を読むばかりが学問では無いが、十分な準備をせずにいきなり実践では失敗する可能性が高い。そして大きな失敗をした場合は費の人民が迷惑をこうむる事になり、子羔の将来も駄目になる。

孔子も「わざわざ説明せねば解らんのか。」とついついキツイ言い方をしてしまったのかも知れないでござる。

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