孔子の論語 子路第十三の二十九 民を教うること七年、亦以て戎に即かしむべし

孔子の論語の翻訳342回目、子路第十三の二十九でござる。

漢文
子曰、善人教民七年、亦可以即戎矣。

書き下し文
子曰わく、善人、民を教うること七年、亦(また)以て戎(じゅう)に即(つ)かしむべし。

英訳文
Confucius said, “You must educate the people for seven years before conscription.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「民衆を戦争に行かせるのならば、その前に7年間は教育を施さねばならない。」

Translated by へいはちろう

「7年教育を施せば、戦争に行かせる事ができる。」と解釈される事が多いのでござるが、次の子路第十三の三十と併せて考えれば逆説的に解釈するのが普通でござろう。

ちなみに「善人」とは普通の庶民の事で、敢えてそう述べる理由は罪を犯した者や敵国の捕虜は、名誉を挽回する意味も含めて戦場で危険な任務を負わされる事が多かったからでござる。

中国の兵法書の六韜では勇猛な部隊を作る方法を以下のように言っているでござる。勇気のある人間や力自慢を集めるだけでは駄目だという事でござるな。人材も有能な人間を集めるだけでは駄目で、普通の人間が能力を最大限に発揮できるようにするのが重要だという事でござる。

武王が太公望に尋ねました。
武王「勇士を選抜して部隊を編成するには、どうすればよいか?」

太公望「勇猛にして死を恐れず、負傷することなど何とも思わない者を編成して”冒刃の士”と名づけます。強暴で意気盛んな者を編成して”陥陣の士”と名づけます。体格が優れよく長剣を使い、集団行動に適している者を編成して”勇鋭の士”と名づけます。脚力があり、力自慢の者を編成して”勇力の士”と名づけます。足が速くて走力があり、高い城壁を飛び越え遠路を走破できる者を編成して”寇兵の士”と名づけます。権力の座を失い、それを取り戻すために功績を立てたいと願っている者を編成して”死闘の士”と名づけます。戦死した将軍の子弟で、その仇を報いたいと願っている者を編成して”死憤の士”と名づけます。貧しい境遇で発憤する者を編成して”必死の士”と名づけます。入婿や捕虜で恥辱を埋め合わせしようとする者を編成して”励鈍の士”と名づけます。衆人や罪を免れた者で恥を雪ぎたいと願っている者を編成して”幸用の士”と名づけます。抜群の才能に恵まれ、重責を担って仕事を成し遂げることができる者を編成して”待命の士”と名づけます。以上が勇士を選抜して部隊を編成する方法です。くれぐれも慎重にしなければなりません。」

子路第十三の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの論語 子路第十三を英訳を見て下され。