孔子の論語 憲問第十四の四十一 果なるかな、難きこと末きなり

孔子の論語の翻訳384回目、憲問第十四の四十一でござる。

漢文
子撃磬於衛、有荷蕢而過孔氏之門者、曰、有心哉撃磬乎、既而曰、鄙哉、硜硜乎、莫己知也斯己而已矣、深則厲、淺則掲、子曰、果哉、末之難矣。

書き下し文
子、磬(けい)を衛に撃(う)つ。蕢(あじか)を荷(にな)いて孔氏の門を過ぐる者あり。曰わく、心あるかな、磬を撃つこと。既にして曰わく、鄙(いやし)きかな、硜硜乎(こ)たり。己を知ること莫(な)くんば、斯れ已(や)まんのみ、深ければ厲(れい)し、浅ければ掲(けい)す。子曰わく、果なるかな。難 (かた)きこと末(な)きなり。

英訳文
Confucius played the Qing (a stone drum) in Wei. Someone with a burden happened to pass by Confucius’ house and said, “You are playing the drum with your feelings.” He said again, “It sounds boring. You must be stubborn. The poem says, ‘Undress before entering the deep river. Roll up the bottom of clothes before entering the shallow river.'” Confucius replied, “It sounds decisive. But I’m playing it easily.”

現代語訳
衛での滞在中、孔子が磬(けい:石製の打楽器)を鳴らしていた。
荷物を担いだ人が家の前を通りがかって言いました、
「音色にあなたの心が表れていますね。」
そしてしばらく聞いた後で言いました、
「つまらない音色だ、音が固くなりすぎている。”深い川では着物を脱ぎ、浅い川では裾をまくる” と詩でも言うでしょう。」
孔子は、
「思い切りの善い考え方ですね。でも私は気楽にやっていますよ。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

この荷物を担いだ人物は隠者でござるな。庶民にまざって暮らす隠者が孔子に詩文を用いて忠告しに来たのでござろう。

「こんな乱れたご時世に、頑固に礼楽を広めようとするのは頭が固くなってるからです。もっと柔軟に生きたらどうですか?」と言われて、

「あなたみたいに世を捨て去るには勇気がいりますね、しかし私は結構気楽にやってますよ。」と答えたのでござる。

隠者をやってるような人に柔軟に生きろと言われても説得力が無いのでござるが、孔子の返答も見事でござるな。拙者としては(史実ではなく、後世の創作と言われているが)老子と孔子の会見をぜひ見てみたかったと思う次第でござる。

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