孔子の論語 公冶長第五の一 縲紲の中に在りと雖も、其の罪に非ざるなり

孔子の論語の翻訳93回目、公冶長第五の一でござる。

漢文
子謂公冶長、可妻也、雖在縲紲之中、非其罪也、以其子妻之。

書き下し文
子、公冶長を謂わく、妻(めあ)わすべきなり。縲紲(るいせつ)の中(うち)に在りと雖(いえど)も、其(そ)の罪に非(あら)ざるなりと。其の子(こ)を以てこれに妻わす。

英訳文
Confucius talked about Gon Ye Chang, “He is eligible to marry. Although he was imprisoned by misunderstanding, he was completely innocent.” Thus Confucius married his daughter to Gon Ye Chang.

現代語訳
孔子が公冶長(こうやちょう)についておっしゃいました、
「彼には妻をもらう資格がある。彼は誤解によって罪を受け投獄されたが、彼には何の罪もなかったのだから。」
こうして孔子は娘を公冶長と結婚させました。

Translated by へいはちろう

公冶長(こうやちょう:姓は公冶、名は長、字は子長。孔子の門弟の一人。伝えられる所では彼は鳥と話をする事が出来た。ある時カラスに騙されて殺人の罪を被るが、鳥と話せる事を証明して無罪となった。)

今回の文は中々に考えさせられるでござるな。何しろ儒家と言う人々は名誉を大変に重んじるからでござる。これは単純に道徳的な意味では無く、儒学社会においては一度不名誉を受ければそれは一生(むしろ家族にまで)ついて回るからでござる。偏見とは名誉の陰にこっそり隠れている虫の様なものでござる。

しかし孔子は偏見によって人を見る事を戒め、実際の行動によってその事を示した訳でござる。名誉は常に偏見を伴う危険があり、歴史的に賞賛される人々の陰には常に不当に貶められている人がいるのでござる。確かに時代劇などには典型的な悪役が出てこないと面白味が薄れるものでござるが、歴史や現在の事情を語る時に悪役を作り出す事は固く戒められねばならないでござるな。

公冶長第五の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの孔子の論語 公冶長第五を英訳を見て下され。