孔子の論語 里仁第四の二十五 徳は孤ならず、必らず隣あり

孔子の論語の翻訳91回目、里仁第四の二十五でござる。

漢文
子曰、徳不孤、必有鄰。

書き下し文
子曰わく、徳は孤(こ)ならず。必らず隣あり。

英訳文
Confucius said, “A person of virtue is not isolated. He must have some companions.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「徳の備わっている人間は孤立する事は無い。必ず仲間がいるものだ。」

Translated by へいはちろう

人格者には友がいる、または友と語らい自らを高める。という様な解釈でござろうか?ここでまた俗世との交わりを嫌った老荘思想家との違いがあらわれていて面白いでござるな。竹林の七賢に代表される様にかれらは決して独りでは無かったのでござるが、老子はその点とても極端でござる。老子の第二十章から衝撃的な一節を紹介するでござる。

世の人々はみんな笑顔でご馳走を食べている様に見える。まるで春の日に高台から世界を見ているかの様だ。しかし私といえば一人きりで動くそぶりも見せず、笑う事を知らない赤ん坊の様だ。ぐったりと疲れて果てて身の置き所も無いかの様だ。世の人々はみな有り余る何かを持ち合わせているのに、私と言えば何もかも失ってしまったかの様だ。私をそういう愚か者の心を持っていて、ぼんやりと何が確かなのか解らずにいるのだ。世の人々はきらきらと眩いばかりだが、私だけは一人暗がりに居る様だ。世の人々は賢く聡明であるのに、私だけは一人悶々としている。ゆらゆらと大海原に漂い、風の様にどこへ行くかも解らない。世の人々はそれぞれ世の為に役立っているのに、私だけが一人じっとして何の役にも立たずにいる。私だけが人とは違っていて、大いなる「母」に養われる事を大切に守っているのだ。

とあり、孤独を嘆いているのか「道」を説いているのか解らないが、むしろ老子の心情の独白であって美しい詩文とさえ思える程でござる。

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