学問のすすめ 四編 段落二 都て物を維持するには力の平均なかるべからず

学問のすすめの翻訳、四編 段落二でござる。

現代語訳

 どんな物であろうと何かを維持するには力の均衡が必要である。例えば人体であるが、これを健康に保とうとするならば、飲食をしなければならないし、空気や陽の光がなければならないし、暑さ寒さ、痛さかゆさといった外部からの刺激に対して体の内部が反応し、そうやって体の働きを調和させているのである。今もし突然にこれら外部からの刺激を遮断して、ただ内部の生命力のみに任せて放置したならば、人体の健康は一日だって維持できないであろう。

国もまた同様である。政治は国の働きであるが、この働きを調和させて国家の独立を維持するためには、内部に政府の力があり、外部に人民の力があり、そうやって内外が呼応してその力の均衡を維持しなければならない。人体に例えれば政府は内部の生命力の様なものであり、人民は外部からの刺激の様なものである。今もし突然にこの外部からの刺激を遮断して、ただ政府のやるがままに任せて放置したならば、国家の独立は一日だって維持できないであろう。仮にも人体の働きを知り、その法則を応用して一国経済を議論する事ができる者は、この力の均衡の理を疑ってはならない。

英訳文

In order to maintain something, the equilibrium of power is indispensable. For example, in order to maintain a human body healthy, you have to eat and drink and you need atmosphere and solar rays. Internal vitality reacts to external stimuli such as hotness, coldness, pain and itch so that you can maintain functions of your body. If you cut off all external stimuli and leave internal vitality alone, you cannot maintain your body healthy even for a day.

The same goes for a country. Politics is a function of a country. In order to adjust the function and maintain the independence of a country, you need the equilibrium of power between the government and the people and their cooperation. In this case, the government is like internal vitality and the people is like external stimuli. If you cut off these stimuli and leave the government alone, you cannot maintain the independence of your country even for a day. If you have the knowledge of human physiology and apply its law to the management of a country, you must not doubt this theory.

Translated by へいはちろう

理論の展開に少々無理な部分を感じないでもないでござるが、言いたい事は伝わるでござるな。

どんなに政治に興味がない人でもある程度の政治の見識を持っている現代と違い、江戸時代までの庶民にとって政治とはお上がやってくれるもので自分達が口を出してはいけないものでござった。しかしこれからの日本の独立を守るためには、政府に任せっきりにはせず庶民が政治参加する事が重要だと、人体を例に解りやすく説明しているのでござろうな。

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