孔子の論語 顔淵第十二の十九 草、これに風を上うれば、必らず偃す

孔子の論語の翻訳308回目、顔淵第十二の十九でござる。

漢文
季康子問政於孔子、曰、如殺無道以就有道、何如、孔子對曰、子爲政、焉用殺、子欲善而民善矣、君子之徳風也、小人之徳草也、草上之風必偃。

書き下し文
季康子(きこうし)、政(まつりごと)を孔子に問いて曰わく、如(も)し無道(むどう)を殺して以(もっ)て有道(ゆうどう)に就(つ)かば、何如(いかん)。孔子対(こた)て曰わく、子、政を為すに、焉(な)んぞ殺(さつ)を用いん。子、善を欲すれば、民善ならん。君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草、これに風を上(くわ)うれば、必らず偃(ふ)す。

英訳文
Ji Kang Zi asked Confucius about politics, “How about killing the criminals to make the people obey the right path?” Confucius replied, “Why do you need to kill the people to govern them? If you aspire goodness, they have it. A nature of gentlemen is a wind. A nature of others is grass. Grass must bow when the wind blows.”

現代語訳
季康子(きこうし)が孔子に政治について尋ねて言いました、
「人々を正道につかせるために、無道の者達を殺してはいかがでしょうか?」
孔子は、
「どうして政治を行うのに人々を殺す必要があるのです。あなたが善を追い求めれば人々は善くなります。人々の手本たるべき君子の性質は風です、他の人々の性質は草です。草の上を風が吹けばおのずから頭を垂れるものです。」
と答えられました。

Translated by へいはちろう

季康子(きこうし:魯の宰相、姓は季孫、名は肥、康子は諡(おくりな)。魯の実質的支配者である三桓氏の筆頭。)

孔子の徳治主義があらわれている文章でござるな。季康子に対して「人々の前にまずあなたを正しなさい。」と前回・前々回につづいておっしゃってるのでござる。

ただ孔子は刑罰だけに頼って統治を行うことに反対ではあったが、刑罰そのものを完全否定していたわけではないので極論に取るのは注意でござる。実際孔子が魯の大司寇(警察・司法責任者)を務めていたときには少正卯という大夫を就任7日目に処刑しているのでござる。もちろん盗賊の類も捕らえて刑を与えたはずでござる。

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