孔子の論語 公冶長第五の二十四 孰か微生高を直なりと謂う

孔子の論語の翻訳116回目、公冶長第五の二十四でござる。

漢文
子曰、孰謂微生高直、或乞醯焉、乞諸其鄰而與之。

書き下し文
子曰わく、孰(たれ)か微生高(びせいこう)を直(ちょく)なりと謂(い)う。或(あ)るひと醯(す)を乞う(こ)。諸(こ)れを其(そ)の鄰(となり)に乞いてこれを与う。

英訳文
Confucius said, “Some people call Wei Sheng Gao an excessively honest person. But I don’t think so. When some person asked him for vinegar, he got it from a neighbor and gave it.”

現代語訳
孔子がおっしゃいました、
「微生高(びせいこう)を馬鹿正直などという者がいるが、私はそうは思わない。ある人が酢をもらいに彼の元へ行った時、隣人に借りてそれを与えたのだから。」

Translated by へいはちろう

微生高(びせいこう:尾生(びせい)とも言う。馬鹿正直の代名詞として荘子・戦国策・史記などに登場する。尾生は橋の下で女と会う約束をした。ところが女が来ない。河の水かさが増してきたが尾生はその場を立ち去らなかった。そして橋げたを抱いたまま死んでしまった。この事から命を懸けて約束を守ることや、馬鹿正直で融通が利かない事を「尾生の信」という。)

この人物は荘子の雑篇の中で盗跖(とうせき:こちらも盗賊の代名詞として数々の寓話に登場する)が孔子を非難する寓話に出てくるのでござるが、その非難の仕方が中々どうして見事なので一度機会があれば読んでいただきたいでござる。もちろん寓話なので作り話なのでござるが、わざわざ盗賊に言わせる所が老荘家の儒家に対する嫌悪感が如実に感じられる文でござる。その中で尾生は伯夷・叔齊らと並んで「名誉を重んじて大切な命を粗末にした愚か者」と断じられているのでござる。

公冶長第五の英訳をまとめて読みたい御仁は本サイトの孔子の論語 公冶長第五を英訳を見て下され。