孔子の論語 為政第二の十八 言に尤寡なく行に悔寡なければ、禄は其の中に在り

 孔子の論語の翻訳34回目、為政第二の十八でござる。

漢文
子張學干祿、子曰、多聞闕疑、愼言其餘、則寡尤、多見闕殆、愼行其餘、則寡悔、言寡尤行寡悔、祿在其中矣。

書き下し文
子張、禄を干(もと)めんことを学ぶ。子曰わく、多く聞きて疑わしきを闕(か)き、慎みて其の余りを言えば、則ち尤(とがめ)寡(すく)なし。多く見て 殆(あや)うきを闕き、慎みて其の余りを行えば、則ち悔い寡なし。言に尤寡なく行(こう)に悔寡なければ、禄は其の中に在り。

英訳文
Zi Zhang asked about how to become a bureaucrat and Confucius replied, “You should listen to many opinions and speak only chosen opinions from them, and you can avoid being criticized. You should observe many things and act only chosen things from them, and you can avoid regretting. If you avoid both being criticized and regretting, you can become a bureaucrat.”

現代語訳
子張が孔子に官僚となり王から俸禄をもらうにはどうすれば良いのか尋ね、孔子はこう答えられました、
「多くの意見を聞いて、その中から疑わしいものを取り除いて意見を言うようにすれば、他人から非難される事が少なくなるだろう。多くの物事を見て、その中から悪いものを取り除いて行動に反映させれば、後悔する事が少なくなるだろう。言葉を非難されず、行動に後悔がないならば、王の信頼を得て仕える事がかなうだろう。」

Translated by へいはちろう

今回の文を説明しようとするととても長くなるのでござるが、当時の中国は官僚制度の黎明期で王が一族や有力者に領土を与えて分担統治させる制度から、王が任命した官僚が代理統治する中央集権体制への過渡期でござる。官僚として仕官するにはその才幹や人となりで王か側近の信頼を得なければならず、ゆえに多くの立身出世を志す若者が孔子の元に集まっていた訳でござる。孔子自身も一時期、魯の国に仕えていたし、孔子の弟子で宰相(王の代わりに政務を行う大役)になった人物もいたのでござる。

さて文章自身の意味でござるが、「人の信頼を得るには、見聞を広めて言行を慎みなさい。」と言う事でござるな。 至極もっともでござる。

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